JA改革は「農業改革」がなおざりにされている 地域JAのほとんどが金融業で生きている実態

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──基本は農業改革なのですね。

まず、どうやって一定のレベルまで復活させるかだ。このままなら輸入ばかりを増やしているだけになる。それだけ地方再生がどんどん遅れる。ここ数年地方に出向く機会がけっこうあって、ひどい衰退ぶりを目にしている。

地方で一定以上の人が生活できる状況を作らなければいけない。東日本大震災以降、特に東北がそうだと思うが、多くの部品工場が中国に移転した。仕事場が減り、元に戻りにくい状態ができてしまっている。また産業のIT化は省人化であり、雇用を増やせるのは農業なのではないか。農業の復活がないと、地方再生はそもそもありえない。

ただ、その地方の人たちも、今は航空網や鉄道網の発達などで普通に東京に遊びに来ていて、都会の暮らしをよく知っている。たまには都会に遊びに行ける所得が欲しいはずだ。その意味でも儲かる農業でなければならない。

JAはどうかかわるのか

──その際のJAのかかわりは。

儲かる農業にしなければ儲かるJAもない。産物をただ単純に市場に出すのでは市場競争の世界に巻き込まれるだけだ。JAそのものが一工夫、二工夫をその産物にしなくてはいけない。手掛かりは加工にあり、流通にある。売り先をきちんと確保する。一定の量のものを安定的、確実に供給する。それは天候に左右される産物だけを出しているJAの世界ではできない。加工手数料が支えになる。農家の人たちに一年中働ける職場を提供する。JAそのものが発想を転換する必要がある。

──農地流動化でもJAの役割は大きい?

農地中間管理機構(農地集積バンク)はうまくいっていない。目標のたぶん10分の1ぐらいしかやれていないだろう。そもそもデータベースがひどい。土地の保有者の名前と住所が書いてあるだけだ。借りる側と貸す側のマッチングができるデータベースを持っているのはJA。それも全国でできる。

──TPPに反対してきました。

JAにとっていい刺激剤だった。野菜などを含めて、価格競争力のある産物の関税が事実上撤廃されていくだけで、影響を受ける部分は少ないのではないか。コメに至っては買わざるをえない状況になるが、米国の余っている分を日本が受け入れるという補助的な姿になることは間違いない。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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