JA改革は「農業改革」がなおざりにされている 地域JAのほとんどが金融業で生きている実態

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杉浦宣彦(すぎうら のぶひこ)専門分野は金融法、IT法。1966年生まれ。中央大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。香港上海銀行、金融庁研究員、JPモルガン証券を経る。金融庁特別研究員、日本資金決済業協会特別理事、サンドラッグ社外取締役に加え、JAグループ自主改革有識者会議座長なども務める。

──改革になっていない?

今回の改革では本当の問題が先送りされている。JA改革の目的は組織が強くなることではない。国民の食卓に安心・安全な食物を安定的に供給することが目的であり、そのための手段としてのJA改革であり、農業改革であるべきなのだ。

何よりJAサイドは今、大きな問題を抱え込んでいる。信用事業がやたら大きい。都市型JAは完全に銀行化してしまっている。

ところが、それを担い数も多い准組合員は、意見を言う場がない。このままではJAのそもそも論が問題になる。そこで、准組合員制度の改変に5年の猶予を与えた。今のままでは都市型JAは批判の矢面に立たされる。信用事業は外してどこかに持っていったら、という乱暴な議論も起きかねない。

今後は効率的な農業ができるようにすべきである

──都市型JAは農業とのつながりの新たな雛形になるのですか。

都市型JAも農業とのつながりを取り戻さなければいけない。具体的には、今さら農地を売り出せないので、地方のJAと提携して、そこでより効率的な農業ができるように投資していく。そして、できた産物を提供してもらう。それができないなら信用組合になりなさい、という処方箋だ。

JAは加工に関する意識が薄かった。流通は全農があったからすべてを任せた。ところが、たとえばコメは、JAそのものが握っている流通パイは今や30%程度にとどまる。価格決定力ももはやない。かなりのJAは大手のスーパーなどと契約を結んで産地直送野菜を作る。だが、JAは加工場を持っているが、見事なぐらい稼働率が低い。弁当や総菜など加工品が売れる時流に乗り遅れている。加工場をフル稼働させながら、都市部に産物を売っていく。解はけっこうたやすく出るはずだ。

──特に兼業農家をもり立てるのがキーポイントですか。

兼業農家の人々は兼業しているだけに、一般の産業がどう動いているかを肌で感じている。むしろ准組合員の中から地域JAの理事を登用したほうがいい。准組合員の理事は金融サービスを利用し同時に他産業の人で、かつその地域における農産物の消費者でもある。外部の目線で語ることができる。会社でいえばいい社外取締役になる。もったいない。

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