《日本人が見たミャンマー軍事クーデター後のリアル》激しさ増すデモと容赦なき弾圧。「どうか無事に」の思いも虚しく、19歳女性が頭を撃たれ…

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明日、ピタッとデモが止むのか、あるいは抗議運動が続き、軍が弾圧に乗り出すのか。もし最悪の事態になったら、再びインターネットや電話回線は遮断されるだろう。週末にインターネットを遮断された時、仕事仲間の1人が不安げにこう呟いていた。

「インターネットがなくても、世界はミャンマーの状況を見ていてくれるかな」外部とのアクセスが失われブラックボックスとなった国で、何が行われるのか。情報が届かなくても、どうか気にかけていてほしい。

ついに女性が頭を撃たれ…弾圧への恐怖

弾圧予告とも言える通達の翌日、2月11日。デモはおさまらなかった。午前10時、今日も仕事仲間から「デモに行ってくる」とメッセージが届く。引き止めたいけど、引き止められない。「わかった。必ず無事に帰ってきて」

そう返信し終えたあと、自分が息を止めていたことに気づく。自宅で椅子に座っているだけなのに、緊張と不安に押しつぶされそうだ。フェイスブックや地元メディアのライブ配信を巡回する。まだ何も起きていない、まだ大丈夫だ。そう自分に言い聞かせながらマウスを操作する手が、汗で滑る。

アパートの窓から、風に乗ってシュプレヒコールが届く。「軍政はいらない! 民主主義を返せ!」昨日まではシュプレヒコールや音楽が聞こえてくると、がんばれー! と無邪気に応援していた。でも、今はひたすら祈るだけだ。どうか誰も傷つきませんように。

午後1時頃、やはりデモは弾圧され始めた。首都ネピドー、そして古都バゴーで。デモ隊にむけられた放水銃は、人が吹き飛ぶほどの水圧だ。水には催涙物質が含まれている、という噂もある。何の罪もない、むしろクーデターの被害者である国民が、国家権力から一方的な暴行を受ける。こうなることを予想していたにもかかわらず、私は全身がずっしりと重くなるようなショックを受けた。

そしてついにネピドーで、19歳の女性が頭を撃たれた。直後からフェイスブック上には、写真や動画が次々とアップされ始める。女性が音もなくパタッと倒れる動画。血のついたヘルメットの画像。女性のものとされるレントゲン写真。メディア各社は、どこよりも早く情報をつかもうと躍起になる。実弾か、ゴム弾か。死亡か、重傷か。軍はこれを「ゴム弾」と発表したため、実弾とわかれば軍の噓が証明される。

だが、私は正直言って、そんなことはもうどちらでもいいと思った。「国家権力」を自称するものが、罪なき国民の頭部を撃ったのだ。その事実だけで、耐えられないほど重かった。反軍政のアイコンとして拡散されていく、女性の画像。1人の命に様々な意味が付加され、消費されていく。叫び出したいほどやりきれなかった。

次はヤンゴンで銃声が聞こえるんじゃないか。デモの渦中にいるはずの仕事仲間や友人の顔が次々に浮かぶ。みんな、どこにいる? あまりの不安と緊張で、吐きそうになる。

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