ミャンマー人権活動家が語る、軍主導の「総選挙」のまやかし。日本政府は結果を認めず、欧米やASEANと歩調を合わせ厳しい対応を
──ミンアウンフライン軍司令官が率いるミャンマーの軍政は、25年末に「総選挙」を実施する方針です。このことはどのような意味を持つのでしょうか。
この「総選挙」なるものは今年7月末に実施が発表された。軍政はこれを「出口戦略」としてとらえている。つまり国際社会をだまし、自分たちの正当性を確立したいという思惑がある。私はミャンマーの人たちからたくさんの話を聞いているが、人々は今回の「選挙」にまったく関心がない。ミャンマーでは20年に総選挙が実施され、投票によって国会議員が選任されている。すでに人々は自分たちが望む政権を選んでいる。今回の「選挙」は話題にすら上っていない。
現にミャンマーの国土の7割以上を、民主派勢力による国民統一政府(NUG)や、少数民族の抵抗勢力が実効支配している。軍政は最大都市のヤンゴンや、マンダレーなどの大都市を支配下に置いているが、そこから離れると軍の支配が及ばない広大な地域がある。このような状況において、「選挙」には正当性はない。
なぜ正当性が欠如しているのか
──正当性の欠如について、もう少し詳しくご説明を。
そもそも21年に軍政が非常事態宣言を出したところに根本的な誤りがある。その非常事態宣言自体、軍自らが起草した「2008年憲法」に違反している。というのは、非常事態宣言の発出は、そもそも大統領の権限であったからだ。軍は21年のクーデターによって大統領や、国家顧問のアウンサンスーチー氏を逮捕した。そして正当性のない逮捕の後、2人いた副大統領のうちの軍出身者を大統領に据えて、その人物に非常事態宣言を出させた。
20年の総選挙で選ばれた国会議員の多くは投獄されている。投獄を免れた議員は、委員会のような組織を立ち上げ、その組織が08年憲法を廃止している。




















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