従業員3人の町工場から「世界5強」に挑んだ!→「資料も師匠ない」逆境から《日本唯一のシンバル》をつくった76歳社長の執念

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小出製作所 シンバル
レーシング加工を終えたばかりのシンバル(写真:筆者撮影)

海外展開を見据え、シンバルに「小出」の文字を

「日本唯一」「国産シンバル」を旗印に、小出製作所はシンバルを売り出す。ウェブサイトを立ち上げ、ドラム雑誌に広告を出した。将来の海外展開を見据え、シンバルに入れるロゴは「小出」とあえて漢字を採用。ブランド名は「小出シンバル」となった。

すると、東京・浅草の楽器店、JPC コマキ楽器から販売したいと依頼が来た。しばらく取引をしたところ、その系列の卸売会社、コマキ通商が、「うちが代理店になるから、全国販売をやらせてほしい」と言ってきた。渡りに船だ。

「自分であちこち売って回ってられへんからね。そんな時間ないから。コマキさんがやってくれるいうんで、もう喜んですぐに任せるから頼みますと」

コマキ通商を通じて全国の楽器店にシンバルを届け、多くのドラマーと接する販売店と頻繁にやり取りを重ね、改良を続けた。月日を追うごとに、サウンドは「王道」に近づき、小さな町工場のシンバルが、少しずつ認知を広げ始めていた。

だが、小出社長にはまだ果たせていない夢があった。

それまで使っていた青銅板は、シンバルの発祥地であるトルコや、ドイツからの輸入品。「日本唯一」と言いながら、材料は海外製だったのだ。これでは、本当の意味での「国産シンバル」とは言えない。しかも、高価で手に入れにくく、輸送の間に材料が硬くなりすぎてしまうリスクもあった。できるなら材料も日本でつくりたい――。

その夢が叶うきっかけは、1本の電話から訪れることになる。

後編では、盟友となる合金メーカーとの運命的な出会い、世界唯一の技術開発、そして、東京スカパラダイスオーケストラや日本フィルハーモニー交響楽団の演奏者が「小出シンバル」を選ぶまでの軌跡について。さらに、「シンバルに秘密はない」と語る小出社長の、ものづくりの流儀に迫る。

後編:「社員は3人」「企業秘密は持たない」日本唯一のシンバルをつくる町工場76歳社長→東京スカパラや日本フィルから熱烈に支持される訳
小出製作所 シンバル
シンバルに入った「小出-Koide-」のロゴ(写真:筆者撮影)
笹間 聖子 フリーライター・編集者

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ささま・せいこ / Seiko Sasama

フリーライター、時々編集者。おもなジャンルは企業ストーリー、ビジネス、幼児教育、発酵。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界誌で17年執筆を続けており、企業と経営者の取材経験多数。「プレジデント・オンライン」「ダイヤモンド・チェーンストア・オンライン」「月刊ホテレス」「FQ Kids」などで執筆。企業noteのライター、ブックライターとしても活動。大阪在住。

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