海外展開を見据え、シンバルに「小出」の文字を
「日本唯一」「国産シンバル」を旗印に、小出製作所はシンバルを売り出す。ウェブサイトを立ち上げ、ドラム雑誌に広告を出した。将来の海外展開を見据え、シンバルに入れるロゴは「小出」とあえて漢字を採用。ブランド名は「小出シンバル」となった。
すると、東京・浅草の楽器店、JPC コマキ楽器から販売したいと依頼が来た。しばらく取引をしたところ、その系列の卸売会社、コマキ通商が、「うちが代理店になるから、全国販売をやらせてほしい」と言ってきた。渡りに船だ。
「自分であちこち売って回ってられへんからね。そんな時間ないから。コマキさんがやってくれるいうんで、もう喜んですぐに任せるから頼みますと」
コマキ通商を通じて全国の楽器店にシンバルを届け、多くのドラマーと接する販売店と頻繁にやり取りを重ね、改良を続けた。月日を追うごとに、サウンドは「王道」に近づき、小さな町工場のシンバルが、少しずつ認知を広げ始めていた。
だが、小出社長にはまだ果たせていない夢があった。
それまで使っていた青銅板は、シンバルの発祥地であるトルコや、ドイツからの輸入品。「日本唯一」と言いながら、材料は海外製だったのだ。これでは、本当の意味での「国産シンバル」とは言えない。しかも、高価で手に入れにくく、輸送の間に材料が硬くなりすぎてしまうリスクもあった。できるなら材料も日本でつくりたい――。
その夢が叶うきっかけは、1本の電話から訪れることになる。
後編では、盟友となる合金メーカーとの運命的な出会い、世界唯一の技術開発、そして、東京スカパラダイスオーケストラや日本フィルハーモニー交響楽団の演奏者が「小出シンバル」を選ぶまでの軌跡について。さらに、「シンバルに秘密はない」と語る小出社長の、ものづくりの流儀に迫る。
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