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従業員3人の町工場から「世界5強」に挑んだ!→「資料も師匠ない」逆境から《日本唯一のシンバル》をつくった76歳社長の執念

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工場の一角に置かれていた、出荷前のシンバル(写真:筆者撮影)

2003年、そうして完成したシンバルは、「音が硬くてロックに向いている」と評判になった。すぐに、大阪には一軒しかなかったドラム専門店と、ホームページを見て連絡をくれた東京の打楽器専門店に置いてもらえることに。やっと、商品化に漕ぎ着けた。

現在は、ハンマーによる手作業と専用マシンを使い分けてハンマリングを行う。こちらはマシンによるハンマリングの様子(写真:筆者撮影)

シンバルづくりの難しさを思い知る

けれど1年後、割れたシンバルを前に、小出社長は再び頭を抱えていた。

はじまりは、「できるなら錫の含有量を上げ、もっといい音を目指したい」とトルコから、高額ではあるが、錫21%含有の青銅を仕入れたことだった。8%のシンバルがドラム専門店で売れていたことから「次なる投資を」と、加熱炉も建設した。

準備は万端だ――。だが、錫21%の青銅は8%とはまったく違った。金属が伸びなかった。

「鉄も銅も、金属ってそれぞれに伸び率があるんですよ。錫の含有量が16%以上になると、途端に伸びが悪くなって、どんどん硬くなるんです。錫の割合が1%増えるごとに硬くなって、15、16%でまったく違う材質になるとわかりました」

それまで、本業で蓄えた知識と設備ではまったく歯が立たなかった。炉の温度管理、ハンマリングの力加減、すべてが未知の領域だったという。ハンマー、切削機……専用の機器を少しずつ買い足しながら試行錯誤を重ねた。

伸びないならばと、熱してやわらかいうちに成形もしてみたが、冷めて叩くとガラスのようにパリンと割れてしまう。その課題に突き当たってはじめて再度調べてみたところ、「大手メーカーの冷まし方は、熱した後に水に漬けている」と知った。

「急冷すると、割れにくい状態になってハンマリングしやすいんです。それを知らなかったから難しかった。失敗の山を築いてもうた」

こうして2004年、世界標準と並ぶ「錫21%」のシンバルが完成した。

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【シンバルに入れるロゴは漢字で「小出」】

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