25年の《秋ドラマ視聴率トップ10》が示す「潮流の変化」 脚本家は新鋭が頭角を現す一方、ベテランが苦戦も…

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そうしたなか、野木氏が念願だったというSF作品に挑んだ本作では、これまでの社会派の要素も薄っすらと盛り込みながら、新たな作風を切り開いた。

そのストーリー構成のほか、誰が敵で誰が味方かわからない登場人物たちの正体などを巡って、SNSではさまざまな考察が飛び交い、大いに盛り上がった。

ただ、時空を超えて複雑に絡まり合う謎に引きつけられた中盤に対して、すべてのつながりが明らかになったラストは、フラストレーションのようなものが残った。

彼らがエスパーになる意味や、それぞれの能力の役割などの設定のほか、そもそもの世界を救うという目的と、そのための数々のミッションのつながりがぼんやりとしているように感じた。これまでの彼女の作品と比較して、いまひとつスッキリしない。

ただ、ドラマは見応えがあった。大泉洋、岡田将生、宮崎あおい、北村匠海をはじめとする役者陣の芝居と、さまざまな謎が前からも後ろからも襲いかかってくる、勢いのある物語に魅了された視聴者は多いことだろう。本作の話題性の高さと数字がそれを示している。

個人的には、野木氏の最高傑作は『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)だが、新たなジャンルに踏み込んだこの先のドラマに期待が高まる。

数字的には惨敗を喫した『もしがく』

もうひとつの今期の話題作が、三谷幸喜氏のオリジナル脚本『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)。

数々の名作、話題作を生み出してきているベテラン劇作家であり、脚本家の三谷氏が、自身の出自となる80年代の演劇界を描くことで注目が集まった。

しかし、視聴率は初回5.4%から、中盤は3%台を推移し、後半は3%を切る回も。ランキングはTOP10圏外となり、数字的には惨敗という結果になった。

本作は、演劇という狭い世界に生きる、昭和の濃い人々の熱き人生を掘り下げた。そこに映し出されたのは、人間のおもしろさ。昨今の不特定多数に響くヒットドラマとは系譜が異なるかもしれないが、三谷節の効いた喜劇を楽しんだ人は少なくないはずだ。

今作を経て、稀代のエンターテイナーが次に何を仕掛けるのか注目したい。

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