伊藤忠が業界トップへ、非資源の収益で明暗 資源価格の下落に、商社はどう立ち向かうか?

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一方、「非資源ナンバーワン商社」を看板に掲げてきた伊藤忠は、住生活情報や機械などの非資源事業が着実に利益を積み増している。

「非資源ナンバーワン」はまさに伊藤忠の看板だ(撮影:吉野純治)

同社がタイの華僑系財閥CPグループと1.2兆円の巨額投資を行った、中国の複合企業「CITIC」も、出資時期の前倒しで持ち分法利益の取り込み期間が拡大する。今期は下期の6カ月間で、300億〜400億円程度の利益貢献となる見通しだ。

ただ、伊藤忠とて、体制が盤石なわけではない。上期は米建材販売大手プライムソースの売却益や、米国のシェール企業サムソン・リソーシズの撤退(6月)による税効果で、計670億円の一過性利益を計上。カサ上げ効果を除けば純利益はほぼ横ばいだ。

11月9日の決算説明会では、通期計画の達成は問題ないとしたが、上方修正しないことも示唆。下期に金属とエネルギー事業で「思い切って前倒しで減損処理をする」(岡藤正広社長)ためだ。

今後も順位は変動するのか

就任6年目を迎える岡藤社長は、歴代社長の任期どおりならば、今期が最終年度の集大成。「財閥系商社はいずれ資源価格が戻れば復活する。それまでに非資源を蓄えないといかん」と、来期以降の首位確保に気を引き締める。

中国の経済減速は鮮明化しつつあり、CITIC、CPとの3社協業による案件創出も「約1年間は様子見」(岡藤社長)と、シナジー実現には当初の想定よりも時間を要する見込みだ。CITICへの巨額投資で悪化した財務体質の改善に向けて、資産売却も急務になっている。

一方、三菱商事、三井物産は、営業キャッシュフローベースでは依然伊藤忠を上回り、投資余力を残している。各社がしのぎを削る中、順位が当面、激しく変動することは間違いない。

「週刊東洋経済」2015年11月21日号<16日発売>「核心リポート06」を転載)

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年4月から再び『週刊東洋経済』編集部。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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