｢美味しさにこだわると利益率が下がる｣葛藤乗り越え…スープ業界の風雲児｢クックピット｣､ラーメン店からひっぱりだこの"大躍進"を叶えるまで

外園さんは、クックピットのスープをすべてに導入してほしいとは考えていない。

「うちのスープはもちろん美味しい。ただ、お店炊きのスープのフレッシュさは唯一無二です。全部うちに置き換えるのではなく、“ハイブリッド”にしていただくのが理想です。たとえば動物系はうちのスープを使って、魚介はお店で炊いてもらう。そうやって組み合わせることで、店の個性は守りつつ、工数や労力は削減できます」

人手不足の飲食業界において、店の創造性を守るための外注という考え方が定着すれば、ラーメン文化の持続性は一段と高まるだろう。

「個人店が“実業”として成長できる土台を作りたい」

最後に外園氏は、ラーメン業界の構造そのものに踏み込む。

「ラーメン屋さんは本当に真面目で、職人気質で、腕もある。でもビジネス構造を理解されてない店舗が圧倒的に多いと感じます。粗利が低い上に、リスクが高い。財務を見ないまま続けてしまうケースも多い。このままでは大手資本によるM&Aが加速して大手チェーン店ばかりになってしまい、ラーメンにこだわり、ラーメンを進化させるような個人店がなくなってしまいます」

外園氏の危機感は強い。しかし同時に、そこにこそクックピットの存在意義があるとも語る。

「我々は、個人店が“実業”として成長できる土台を作りたいんです。仕入れ、営業、味作り、財務……その全部を少しずつでも底上げして、ラーメン業界を一段上のビジネスにしたい。

ラーメンが日本食の代表のひとつになっている状況で、世界に誇る日本の美味しいラーメン屋が個店でもビジネスとして勝負でき、この素敵な食文化が未来永劫続くとともに、進化できるお手伝いがしたいんです」

美味しいラーメンを提供する個人店が長くお店を続けてもらう土台を一緒に作り続ける存在として、クックピットはこれからも新たな価値を提案していく。

クックピットと外園さんのさらなる躍進から目が話せない（写真：筆者撮影）

この連載の一覧はこちら

著者フォローすると、井手隊長さんの最新記事をメールでお知らせします。