外食の世界で「スープ会社」と聞けば、多くの人は「裏方」としての存在を思い浮かべる。店が求める味を陰で支え、安定した品質で供給する技術者集団──。
だが、その裏側がどれほど複雑で、どれほど可能性を秘めているかを知る人は少ない。ましてや、業界全体の進化を牽引する存在となり得るかどうかなど、多くの人は想像すらしていない。クックピット株式会社の新社長・外園史明さんは、その固定観念を変えようとしている。
“良くないスープ”が出回ってしまっている現実
ラーメン業界には、一般には見えない原材料の現実がある。外園さんがクックピットの経営に携わるようになって最初に驚いたのは、世の中に出回っているスープや調味料のクオリティの幅広さ、そして、そのなかには決して良いとは言えないものが相当量、存在しているという事実だった。
「最初は本当に衝撃でした。世の中にはこんなに多種多様なスープが出回っていて、しかも“良くないもの”が結構な割合を占めている。だからラーメン屋さんは麺の仕入れ先は表に出すのに、スープの仕入れ先は隠すことが多いんだと思いました。
クックピットは創業当時からずっと“良いものだけをつくる”という姿勢を貫いていた。そこは胸を張れる部分ですが……実は、美味しいものを誠実に作ろうとすればするほど、儲けは出にくくなる構造なんです」(外園社長、以下同)
外園さんは苦笑する。原材料の仕入れは先払いで、賞味期限は短い。配送料は年々高騰し、在庫リスクも重い。理屈としては理解していたが、実際に経営を担う立場になると、品質主義を貫くことのハードルの高さを思い知らされたという。



















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