5G、通信量急増で2029年にも限界へ。新周波数"7GHz帯"は、6G時代に向け実用性を示せるか

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通信品質を測る指標に「SINR」がある。「信号対干渉雑音比」の略で、信号の強さと周囲のノイズの比率を表す。SINRが高いほど、データを正確に復号しやすく、結果として速度が出る。逆にSINRが低いと、電波は届いているのにデータがうまく読み取れず、「アンテナは立っているのに遅い」という現象が起きる。

受信電力では7GHz帯が10dB(約10倍)ほど低かったものの、干渉が少ない分、SINR値では7GHz帯が上回っていた。3.9GHz帯は商用基地局が多く電波同士が干渉し合うが、7GHz帯はまだ実用化されておらず、実験局の3局しか電波を出していない。電波の強さより、「きれいな電波」であることが通信品質に効いていた。

凡例
受信電力(RSRP)は3.9GHz帯が優位だが、通信品質(SINR)は7GHz帯が上回った(筆者撮影)

竹芝に戻る途中、新橋あたりで7GHz帯の電波は途切れた。基地局のアンテナが向いていない方向でも、反射波によってかなり遠くまで通信できることが確認できた。

6Gに向けた「センチメートル波」の可能性

冒頭で触れた「センチメートル波」という名称は、電波の波長に由来する。5Gで使われる3.5GHz帯の波長は約8.6cmだが、7GHz帯は約4.3cmと半分になる。

周波数帯
モバイル通信の世代ごとに使用する周波数帯。6Gでは7GHz帯を含む「センチメートル波(FR3)」が新たに加わる(筆者撮影)

アンテナ素子のサイズは波長に比例するため、波長が半分になれば素子も小型化する。縦横それぞれ半分になるので、同じ面積のアンテナに4倍の素子を搭載できる計算だ。先ほどの懐中電灯の例えで言えば、同じ大きさの板に載せられる懐中電灯の数が4倍になる。アンテナ素子が増えれば、電波を特定の方向に集中させる能力が高まり、伝搬損失を補える。矢吹氏によると、7GHz帯で128素子のアンテナを使えば、3.5GHz帯の32素子アンテナとほぼ同等のカバレッジを実現できるという。

6Gでは、5Gの100MHz幅を超える広い帯域幅が想定されている。7GHz帯周辺には約2GHz幅の連続した周波数が確保できる可能性があり、事業者あたり200〜400MHz幅の割当が期待されている。現在の100MHz幅が4車線道路だとすれば、400MHz幅は16車線道路に相当する。同じ人数が使っても渋滞しにくく、一人あたりの実効速度が上がりやすくなる。

「7GHz帯がマクロ局での広域エリア展開に有効だということが、今回の実験で確認できました」と矢吹氏は手応えを語った。今後は6GHz帯や8GHz帯にも実験を拡張し、6Gの早期導入に向けた知見を蓄積していく方針だ。

5Gのミリ波は、エリア展開の難しさからスマートフォンではあまり活用されていないのが実情だ。6Gのセンチメートル波が、既存の基地局インフラを活用しながら広域をカバーできるなら、次世代通信の普及に大きく貢献する可能性がある。銀座での実験は、その第一歩を示したといえるだろう。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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