5G、通信量急増で2029年にも限界へ。新周波数"7GHz帯"は、6G時代に向け実用性を示せるか
「Wi-Fiがアクティブな状態になると、携帯電話端末のスループット(データ転送速度)がほぼゼロになりました。逆に携帯電話がアクティブだと、Wi-Fiのスループットが約半分に低下しました」と高岡氏は語った。スマホの体験で言えば、「アンテナは立っているのに動画が止まる」「Webページがなかなか開かない」といった状態に陥ってしまう。共存が技術的に難しい以上、各国は7GHz帯をWi-Fiに使うか、携帯電話に使うか、どちらかを選ばざるを得ない。
ベトナムも7GHz帯を携帯電話向けに割り当てる方針を決定しており、タイも追随する見込みだ。ただしアメリカはWi-Fiへの割当を決めており、国際的な足並みは揃っていない。日本でも既存の衛星通信やWi-Fiとの調整が課題となっている。
銀座での実証実験が示した可能性
ソフトバンクは2025年6月から、ノキアと協力して東京・銀座で7GHz帯の屋外実証実験を進めてきた。日本の通信事業者として初めての取り組みだ。
「7GHz帯は高い周波数なので、そもそもモバイル通信に使えるのかという疑問がありました」。ソフトバンク先端技術研究所の矢吹歩・6G準備室長はこう振り返る。5Gでは28GHz帯の「ミリ波」も使われているが、エリアが狭くスマートフォンではあまり活用されていない。7GHz帯が、現在主力の3.5GHz帯と同じように広域をカバーできるのかが問われていた。
実験では銀座4〜8丁目エリアに7GHz帯の基地局を3局設置し、同じ場所に設置している3.9GHz帯(5G)の基地局と比較評価を行った。
使用したのは128素子の「Massive MIMO」アンテナだ。Massive MIMOとは、多数のアンテナ素子を束ねて電波を飛ばす技術を指す。懐中電灯に例えると分かりやすい。素子1つは小さな懐中電灯で、光が広がってしまう。しかし128個の懐中電灯を並べて全部を同じ方向に向けると、強い光の束になって遠くまで届く。さらに個々の向きを変えれば、複数の方向に同時にビームを作ることもできる。
実験で使った帯域幅は100MHzだ。帯域幅は「道路の車線数」に近いイメージで、広いほど同時に送れるデータ量が増える。現在の5Gでは100MHz幅が標準的だが、6Gでは200〜400MHz幅が期待されている。車線が2〜4倍に増えれば、混雑時でも速度が落ちにくくなる。



















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