5G、通信量急増で2029年にも限界へ。新周波数"7GHz帯"は、6G時代に向け実用性を示せるか

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理論上、7GHz帯は3.5GHz帯と比べて電波の減衰が約6dB大きい。電波の世界で使う「dB(デシベル)」は対数の単位で、直感的には分かりにくいが、6dBは約4倍の差を意味する。つまり同じ距離を飛ばすのに4倍のエネルギーが必要になる計算だ。しかし実験結果は予想を覆すものだった。

「見通しの良い環境での損失差は、中央値でわずか0.94dBにとどまりました。理論値の6dBより大幅に小さかったのです」と矢吹氏は説明した。0.94dBは約1.2倍の差にすぎず、「ほぼ差がない」と言っていい数字だ。

Massive MIMOアンテナ
会場に展示された7GHz帯対応のMassive MIMOアンテナ。128素子を搭載する(筆者撮影)

この結果について矢吹氏は、銀座のような都市環境では高いビルに囲まれているため、電波がビルで反射しながらエネルギーが外に漏れにくく、遠くまで届くのではないかと推測している。

3局で200m×500mの範囲をカバーした結果、圏外となるエリアはわずか0.5%だった。通信品質も良好で、高速通信が可能な品質を示すエリアが23.5%を占めた。

記者もバスで体験した「7GHz帯の実力」

イベント当日、筆者は実際にバスで銀座エリアを走行し、7GHz帯の電波伝搬を体験した。

バスには2台の測定端末が搭載されていた。3.9GHz帯と7GHz帯の受信電力と通信品質をリアルタイムで比較できる構成だ。画面上では、受信状態が色分けで表示される。緑色は良好、黄色は通信可能、赤色はギリギリ、茶色は圏外を示す。

デモ画面の凡例
デモ画面の凡例。緑色が「良好」、黄色が「通信可能」、赤色が「ギリギリ」、茶色が「圏外」を示す(筆者撮影)

銀座の中央通りを走行すると、7GHz帯の画面は緑色のポイントで埋まった。基地局から電波が直接届く「見通し内」のエリアでは、3.9GHz帯と遜色ない通信品質を確認できた。

興味深かったのは、基地局の真裏を走行したときだ。本来なら電波が届きにくいはずの場所でも、ビルで反射した電波によって通信が維持されていた。ソフトバンクの担当者は「銀座のビルは電波をよく反射するので、こうした回り込みでカバーできています」と説明した。

デモでは、7GHz帯の干渉の少なさも確認できた。3.9GHz帯は周囲に多くの商用基地局があるため電波同士が干渉し合うが、7GHz帯は実験局の3局のみ。

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