補正予算の「物価高対策」はどう転んでも残念な結末を迎える…財政政策で物価高をあおらず、家計を生活支援する有効な手とは

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しかし、それで物価高対策は功を奏したといえるだろうか。

結局、給付をもらっても消費に回さなければ、貯金に回るだけで、もらってももらわなくても消費は変わらず、生活水準は変わらない。それでは、足元の家計の生活支援にはつながらず、物価高対策として功を奏したとはいえない。

ましてや、ガソリン価格が暫定税率分だけ値下がりしても、ガソリンを消費しなければその恩恵にはあずかれない。電気・ガス代もそうである。それでは、物価高対策として何の意味もない。

このように、財政支出や減税による物価高対策が、物価高をあおることにならなかったらならなかったで、足元の家計の生活支援にはならない結果に陥る。

以上みたように、財政支出や減税による物価高対策が、物価高をあおってもあおらなくても、残念な結果になる。今般の物価高対策の後で、物価が上がるか上がらないかのどちらかにしかならないから、不都合な結果がみえている。

では、財政政策で物価高対策はできるのか。

財政政策で低中所得層への生活支援をする有効な手とは

マクロ経済政策において、第一義的に物価に働きかける政策は、金融政策である。金融政策が、能動的に物価水準を見極めながら講じることができれば、物価高対策は金融政策で行うのが基本である。

日銀の金融政策の手足をしばっておいて、財政政策で物価高対策を行おうとしても、自明に良い結果が得られることはない。

財政政策は、マクロ経済での物価水準そのものに働きかける役割ではなく、むしろ低中所得層の生活支援を所得再分配政策として行うべきである。高所得者には支援せず、物価上昇で購買力が失われた低中所得層にターゲットを絞って支援する政策こそが求められている。

そのために有効な施策は、給付付き税額控除である。毎年、補正予算で臨時的に給付を出してばかりでは、国民に「しょせん今年限りの給付」と見透かされ、期待される政策効果も実現しにくくなる。

そうではなく、給付付き税額控除として、恒久的な仕組みとして体系的に制度設計することで、どういう所得水準になったらどの程度支援が受けられるかを予見可能にしておくことで、万一所得が減っても給付で補ってもらえるから生活水準が維持できて安心という認識を持ってもらうことができる。

それとともに、所得が増えれば累進課税によって所得税を払うことで、給付の財源も確保しつつ所得格差を是正することができる。

補正予算で場当たり的な政策をするのは、これで最後にすべきである。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶応義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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