結婚どころか今まで恋愛経験は一切ない人も…「年収500万の壁」を突破できない中間層の苦しい現実

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本人の年収で見ると、明らかに低年収帯では未恋率が高く、平均を下回るのは年収500万円以上となります。婚活界隈のネット記事などでは「結婚相手に求める最低年収500万円」というのがよく話題になりますが、結婚どころか恋愛もこの500万円の壁を超えないと平均に達しないという現実があります。

念のため、25〜34歳における未婚男性の年収ボリュームゾーンは300万〜500万円台であり、ここが中間層なのですが、これらは「中間層では恋愛もできない」という現実を突きつけます。

同時に、気になるのが親の所得環境です。親が裕福であれば未恋率は低いが、親が経済的に苦しい環境で育った場合子の未恋率も高くなります。一人暮らしより親と同居している方が未恋率が高いのも、自立心がないとかの問題以前に、一人暮らしをする(または親がさせてあげる)経済力がないがゆえの親と同居という背景があります。

中間層男性が結婚どころか恋愛すらできない

そもそも本人の経済力も親の経済力と相関するというデータもあります。裕福な親を持つ子であれば、結果としてその子もいい教育、いい学校、いい会社に入ることで裕福になるという身もふたもない話ですが、実際かつて「親ガチャ」という言葉もあったように親の経済力は子に"遺伝"することもまた現実でもあります。

日本の昨今の婚姻減は、この中間層の年収帯の婚姻だけが激減していることです。あまり認知されていませんが、これだけ未婚化・婚姻減という中でも経済力上位3割の結婚は全く減っていません。

そして、かつて結婚できていた中間層男性は、結婚どころか恋愛すらできなくなっており、男性に関してはまさに「金がなければ恋愛もできない」という現実があります。

ちなみに、男女ともにもっとも結婚意欲が高まるのもこの25〜34歳の年齢帯ですが、「一番人口の多い中間層が、一番結婚したいと思っている時期に経済的な理由で結婚どころか恋愛もできない」という状況なのだとしたら、それは婚姻数が増えるわけがありません。

もちろん、金だけがすべてとは言いませんが、少なくとも今よりかつての中間層の若者は「金がなくても将来の希望はあった」でしょう。AIに相談せずとも、同じ中間層同士の若者の横のつながりも助け合いもあったでしょう。学校や職場は、恋愛や結婚に結びつく若者の縁をお節介し、言祝ぐ空気がありました。

昔がいいという話をしたいわけではなく、社会における人のつながりが希薄になった分、「自由だけれど自己責任でどうぞ」という雰囲気は強まっています。まさに「社会の個人化」というものですが、究極的に個人化が進めばそれは結婚や家族というものは消滅していくことになるでしょう。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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