観客数は2年で倍増、J2復帰1年目でJ1昇格も見えた? RB大宮を躍進させた外資流「ファクトフルネス改革」の全貌

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ビジネス界では「データドリブン」「ファクトフルネス」といった言葉が浸透しているが、サッカー界はそこまでドラスティックになり切れていない部分があるのかもしれない。

今季、Jリーグ60クラブのうち約3分の1で監督交代があったが、すべてがデータやファクトに基づいた判断だったかといえば、そうとも言い切れないケースも散見される。逆に、成績が停滞していたにもかかわらず、指揮継続を選んで結果が出なかったクラブも複数ある。

RB大宮の場合は外資らしいドライな分析を経て、宮沢監督の抜擢に至った。宮沢監督はJリーグで指揮を執った経験がなく、監督交代の効果はまったくの未知数だったが、そこから6戦無敗。J1昇格のライバルだったジュビロ磐田やベガルタ仙台、水戸にも勝利した。

ラスト2戦は連敗してしまったが、何とかJ1昇格の可能性を残した。宮沢監督の就任、新たなマネジメントによって、もう一度、選手たちのスイッチが入ったのは間違いない。

「レッドブルグループの他チームに目を向けると、ドイツのライプツィヒも昨季のUEFAチャンピオンズリーグでの早期敗退によって今年3月に監督交代に踏み切っています。引き継いだ監督がブンデスリーガ1部で7位に終わったことで、今季はさらに新たな監督を招聘。今は2位につけています。『ダメなときは大きく変えてチャレンジする』『トライ&エラーを恐れない』という彼らの文化からは刺激を受けています」(原社長)

「やらない後悔より、やって後悔」

レッドブルグループは若い選手を育て、大きく羽ばたかせることをポリシーにしているが、各国のサッカー文化や環境も尊重している。年齢構成もチームごとにまちまちだ。

RB大宮の場合もU-20日本代表キャプテン・市原吏音に主将を任せる一方で、30代の元日本代表・杉本健勇、J1経験豊富な背番号10・豊川雄太ら、ベテランの力も有効に活用。外国人選手の力も加えながら、バランスのいいチームを構築している。

レッドブル傘下に入ったからといって、いきなりチーム人件費が大幅増となったわけではなく、今季もJ2では6~7番目の水準。J3だった昨季が7億円程度だったから、多くても10億円レベルだろう。そういう中で圧倒的な強さを誇るチームを作るのは、なかなかの難題なのである。

「今季J2は混沌とした状況が続きましたが、レッドブルグループとしては、J1昇格のチャンスがあるなら一気に上がるという機運を大事にしています。監督交代にしても『やらない後悔より、やって後悔したほうがいい』というスタンスで、躊躇しないで前進する。そういうチャレンジャー精神は本当にJリーグに欠けていた部分だと痛感します。フロント側も積極性が出てきましたし、前向きな変化が起きています。その機運を何とか昇格につなげていきたいと思っています」(原社長)

原社長が願うような最高のストーリーを現実にするためにも、まずは7日の千葉戦で勝つことが重要になってくる。夏開幕へ移行する26-27シーズンにJ1にいるのか、J2にとどまるのか。それ次第でクラブの今後も大きく違ってくるだけに、まずは7日の戦いぶりを注視したい。

後編に続く)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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