観客数は2年で倍増、J2復帰1年目でJ1昇格も見えた? RB大宮を躍進させた外資流「ファクトフルネス改革」の全貌

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こう語るのは、1月に就任した原博実社長だ。グッズに関しては、外国人の目線を取り入れ、デザインの工夫に乗り出した。一例を挙げると、RB大宮仕様の自動販売機をバックプリントしたTシャツ。ホーム最終戦だった11月23日の徳島ヴォルティス戦で販売したところ、スタジアムに準備したほとんどの在庫が売れたという。

原博実
爆売れしたという自販機Tシャツを見せる原社長(写真:筆者撮影)

「外国人から見ると、クラブ仕様の自動販売機は珍しくて斬新。そういう意見があったので、レッドブル本社のデザイナーの協力のもと、早速Tシャツやパーカーを作ったら、非常に反響が大きかった。営業・グッズ担当スタッフも『どんどんやりましょう』と活気に満ちていますし、それも雰囲気の変化につながっていると思います」(原社長)

9月にスチュワート・ウェーバー氏がヘッドオブスポーツに就任するなど、現場の増強はもちろんのこと、フロント人材もテコ入れが図られている。この1年間で広告代理店やメーカー、メディア、ほかのJクラブなどから、経験豊富なスタッフが相次いで加入。全体で10人近く増えた。彼らが積極的に挑戦しやすくなっているのは、外資参入の大きな効果だ。

関係者を驚かせた監督交代の舞台裏

現場・会社ともに意思決定もスピードアップした。「成功確率の高そうなことはどんどん実行に移す」という新たな文化ができつつある。

象徴的な事例の1つが、9月の宮沢悠生監督の抜擢だろう。今季の大宮は、J3に降格した24年に就任し、1年でJ2復帰へと導いた長澤徹前監督体制でスタート。序盤から快進撃を見せていた。原社長自身、長澤前監督とはFC東京で長く仕事をしており、強い信頼を寄せていたはずだ。

ところが、5月末から思うように勝ち点を伸ばせなくなり、8月末から9月にかけて3連敗を喫した。そのタイミングで、クラブは長澤前監督との契約解除を決断。レッドブル・ザルツブルクのアカデミーなどで指導経験のあった40歳の宮沢監督を抜擢し、一気に立て直しを図ったのである。

とはいえ、宮沢監督就任時点の大宮は8位。自動昇格圏の2位にいた長崎と8ポイント差、プレーオフ圏内の6位にいた徳島ヴォルティスとはわずか1ポイント差で、そこまで危機的な状況にあるようには感じられなかった。ゆえに、大なたが振るわれた際には関係者の間で「今、ここで長澤監督を替えるのか」という驚きの声が上がった。

原社長とクラブ強化部門が重視したのは「客観的なファクト」。直近13試合で3勝4分6敗、しかも北海道コンサドーレ札幌、長崎、FC今治に3連敗しているという事実を深刻に受け止め、レッドブルグループとも意思疎通を図り、クラブとして重大な決断を下したという。

「長澤前監督はJ3のときから強固な基盤を作ってくれましたし、選手とも非常に良好な関係性を築いていた。あの時点でも関係が悪くなったということは一切、ありませんでした。ただ、直近3連敗で『何かをやらなければいけない』という意見もあり、監督交代を決断しました。僕も長くJリーグで働いてきましたけど、日本の感覚ではあのタイミングでの監督交代は考えにくい。データやファクトで判断するというレッドブルグループの考え方から自分自身、学ばされるところはすごくありました」。原社長は神妙な面持ちで語る。

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