ネズミがごみを食い荒らし糞が散乱、無数のコバエが顔にぶつかる…「ごみ収集現場」新宿区長がガチ体験した"結果"

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フロアごとにごみを集め、専用の袋に入れてエレベーターで下の階へと向かい、いっぱいになると軽小型ダンプに積み込んでいく作業を繰り返していく。

独居高齢者宅から排出されるごみは小さいイメージがあろうが、おむつが排出されると一挙にサイズが大きくなりごみは重たくなる。また、最近は置き配が増えているため、間違えて届け物を収集してしまうこともある。1つずつ確認しながら収集していく作業が続いていった。

収集したごみをまとめる
収集したごみをまとめる(筆者撮影)
下の階へと移動して作業を進めていく
下の階へと移動して作業を進めていく(筆者撮影)
軽小型ダンプへの積み込み
軽小型ダンプへの積み込み(筆者撮影)
作業を繰り返していく
作業を繰り返していく(筆者撮影)

エレベーターは住民優先とし、住民が乗っていれば乗り込まず、1回やりすごす配慮を施す。そして、ごみを持って移動できる量であれば、階段を利用して降ろしていく。このような細やかな配慮を施しながら訪問収集が進められていく。

訪問収集を終えた区長の所感

訪問収集を終えた吉住区長は、「かなり気を使いながら作業をしている。細やかな配慮を考案して実践している」と話していた。

エレベーター
エレベーターは住民が優先(筆者撮影)
階段
運べる量ならば階段で降ろしていく(筆者撮影)

今回の収集体験を通じて吉住区長は、外国人住民が多く暮らす地区のごみ排出の状況や、ごみ収集業務が地域福祉や安全確保にも関わる重要な行政基盤であることを再認識したという。現場で奮闘する清掃職員の実態を体験し、清掃業務が新宿区ならではの地域支援の一翼を担っている現状を直接確認した。

現場を知ることは、単に労働環境を理解するだけでなく、行政サービスの持続可能性を高める視点を得ることに結びつく。清掃事業は、地域社会を最前線で支える公共インフラであり、その現場の理解なくして行政の質的向上は望めない。

今回の収集体験は、現場と行政トップの垣根を越えた取り組みであり、自治体が抱える複合的課題に対して、現場から発想する区政運営の可能性を示したものである。こうした現場主導の自治体経営が都市行政の質的向上に貢献するだろう。

藤井 誠一郎 立教大学コミュニティ福祉学部教授

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ふじい せいいちろう / Seiichiro Fujii

1970年生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。

同志社大学総合政策科学研究科嘱託講師、大東文化大学法学部准教授などを経て現職。専門は地方自治、行政学、行政苦情救済。

著書に『ごみ収集という仕事――清掃車に乗って考えた地方自治』(コモンズ)『ごみ収集とまちづくり――清掃の現場から考える地方自治』 (朝日選書)『ごみ収集の知られざる世界』(ちくま新書)がある。

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