今後、もしテレビで報道されたならば、テロップには“吉田直人(38)無職”と表記されることだろう。
トミタ商事の上層部は、社名の報道を避けるためにあの人事部の女を送り込んだのではないか。今さらながらに、そんな気もした。
無職になっても、起訴される可能性が高くとも、直人は女への謝罪だけはどうしても受け入れられなかった。
ついに判決が言い渡され……
結果、勾留二十日目に起訴され、一年近くに及ぶ裁判の末に敗訴した。
──判決、懲役六か月、執行猶予三年。
到底受け入れられる判決ではないが、一年近くに及ぶ裁判で、直人も妻も疲弊し切っていた。そして娘の真奈も、幼いながらに父母の異変に気づいていた。
パパは会社へ行かなくなった。家にいることが多くなった。でも以前のように遊んでくれなくなった。いつもどこか難しい顔をしている。
何が起きているのか、真奈にも説明する必要がある。もちろん痴漢冤罪などと言っても、真奈には理解できない。直人はできるだけ分かりやすく、かつ真奈の不安を和らげられるような言葉を探す。
「パパは今ね、いろんな人から嘘をついているって言われてるんだ。でもパパは嘘なんてついていない。パパは本当のことを言っている。そのことをみんなに分からせるために、パパとママは戦っているんだよ」
すると真奈は、母親譲りのきょろんとした瞳を丸くして言う。
「マナはね、パパのこと信じてるから大丈夫だよ」
直人は控訴を取り下げ、刑が確定した。
直人の裁判生活は終わり、自分をハメたあの女への憎悪だけが残った。直人はハローワークのパソコンで職探しをしながらも、気づけば検索欄に「復讐」「復讐」「復讐」と何度も打ち込んでいた。
そしてふいに想起したのは、学生時代に2ちゃんか何かで読んだ、復讐代行業者のことだった。
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