3年間で1600体の亡骸と対面した元検視官が証言「異臭がする」「連絡が取れない」から始まる"検視"という仕事のリアル
検視は、答えの見えない謎から始まります。
私の検視官生活は、私なりに五官を駆使して現場や遺体を観察し、違和感を覚えたことやわからないことは正直に周りに教えを請いつつ、目の前の遺体のさまざまな謎を解くことから始まりました。
検視官として現場に出るときは1人ではなく、必ず「相勤者(あいきんしゃ)」と呼ばれる警部補以下の勤務員とコンビを組んで動きます。実際に何度か現場を経験して感じたのは、この相勤者がとても頼りになるということでした。
相勤者のなかには、検視経験が豊富で優秀な勤務員が何人もいました。
また、現場には管轄する署からも捜査員がやってきます。このなかにも刑事経験が長かったり、検視調査室での勤務経験があったり、検視の知識が豊富なベテラン捜査員がいたりします。
検視には多角的な視点が重要
本当なら検視官たるもの、長い経験と豊富な知識から遺体の謎を1人で解ければ格好いいのかもしれませんが、私は経験不足を素直に認め、相勤者や署の捜査員と意見を出し合って考え、最終的には私自身で結論を出すことにしました。
そのようにして自分1人でなく、多くの捜査員の知識を動員して検視を進めていくようにしたわけですが、徐々に経験を積んでいくなかで感じたのは、誤認検視を防ぐとともに検視官として独善に陥らないためにも、多角的な視点は重要だということでした。
やがて、私も経験や知識がついてきて、自分なりの判断ができるようになっていきましたが、私を育ててくれたのは相勤者や署の捜査員であり、今でも感謝しかありません。
また、私が長くいた当時の生活安全部は、社会から犯罪を減らし、少年非行防止や風俗環境浄化などの諸対策に取り組み、そうして街を良くしていこうというような方向性を持つ部門であり、つまりは「社会」を念頭においた活動をしていました。
そんな私の経歴も、遺体を取り扱いながら、遺体を取り巻く社会のあり方や社会課題について考えるきっかけになったように感じます。
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