3年間で1600体の亡骸と対面した元検視官が証言「異臭がする」「連絡が取れない」から始まる"検視"という仕事のリアル
あなたが、外出先から自宅に帰ってきて玄関ドアを開けたところ、目の前の廊下に家族が倒れているのを見つけたら、まずは救急車を呼ぶために119番通報をするでしょう。
しかし、救急車が到着しても、すべての傷病者が病院に運ばれて蘇生措置や死亡宣告を受けるわけではなく、傷病者が明らかに死亡している場合は救急搬送しないものとする規定があります(救急業務規定第19条 死亡者の取扱い)。
本来であれば、法的な死は医師の死亡宣告によって確定します。
医師が確認する「死の三徴候」とは、呼吸の停止、心拍の停止、瞳孔散大の症状であり、これらがすべて確認できた場合に、人は死亡したと判断されます。
しかし、医師の判断を仰ぐまでもなく、身体の状態から明らかに死亡していると判断できる場合、蘇生は不可能であり、社会死と呼ばれる状態として救急搬送されないケースがあるのです。
例えば、腐敗が進みミイラ化している遺体や、頭部の外傷が激しい遺体、そして次に掲げる消防の判断基準に該当する場合などです。
変死事案が成立するパターン
消防庁は、「救急業務において傷病者が明らかに死亡している場合の一般的な判断基準」として、(1)意識レベルが300であること、(2)呼吸がまったく感ぜられないこと、(3)総頸(そうけい)動脈で脈拍がまったく触知できないこと、(4)瞳孔の散大が認められ、対光反射がまったくないこと、(5)体温が感ぜられず、冷感が認められること、(6)死後硬直又は、死斑が認められること、の6項目を挙げています。
そのすべてに該当するケースでは、「明らかに死亡している場合」と判断されることがあるのです(「救急活動時における適正な観察の実施について」消防救第109号、平成30年6月4日付)。
そして消防が明らかに死亡している場合と判断したなら、それは変死事案であり、消防から警察に通報されるのです。
また、会社の談話室であなたと会話をしていた同僚が目の前で突然倒れたとします。救急車で病院に搬送されたものの、結果的に死亡確認がなされることがあるかもしれません。
病院の医師からすれば、通院歴もないまま突然病院に搬送されて亡くなった人に対し、死亡確認はできるとしても、死者の持病もわからず、体調急変時の状況や生活状況などもわからず、諸検査で死因が特定できなければ死亡診断書を書けません。
このような場合は、異状死と判断され(医師法第21条)、医師や病院関係者から警察に届出がなされます。



















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