3年間で1600体の亡骸と対面した元検視官が証言「異臭がする」「連絡が取れない」から始まる"検視"という仕事のリアル
私としては、捜査を希望していたのになぜ検視……という思いも多少ありましたが、異動が決まった以上、仕方がありません。
署の当直員として検視を担当したことがある程度の経験しかなく、検視官の条件である10年以上の刑事としての実績はどうやっても満たせない私に挑戦させてくれるとは、なんて懐の深い組織なのだと感じました。
こうなったら警察大学校の法医専科で法医学の勉強をして、かろうじて検視官の要件を満たし、あとは自ら勉強して、真っ当な検視官になるべく努力するしかありません。
検視官としての勤務が始まってみると、こちらの都合にはお構いなく変死事案は入ってきます。
物怖じしている暇はないし、同僚などの好奇の目も気にしてはいられません。また、こういう専門性の高い業務は、ややもすると周囲の同僚は職人気質で、基本的には誰も何も教えてくれないし、マンツーマンの指導者がいるわけでもありません。
そして、大抵の検視の現場では私が最上位階級です。遺体の脇で捜査員を指揮しながら、自ら考え判断しなければならず、その責任を負わねばなりません。
ましてや、自分の担当する管内で殺人事件などが起これば、当然検視を担当することになるわけです。「検視官としてあまり経験はないので」などと言い訳もできません。
検視の対象である遺体も、その家族も、検視に従事する捜査員も、検視官を選べません。誤った検視をすれば重大な結果を招きます。
さて、どうしたものか……。
誤認検視を防ぐために
遺体には1つとして同じものはありません。
まずは限られた捜査員とともに検視を進めて事件性の有無を判断するとともに、死因や死亡時期などを推定し、損傷があれば受傷機転や死因との因果関係、自殺であれば自殺動機、そして身元など、すべてに何らかの答えを出さなければなりません。



















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