3年間で1600体の亡骸と対面した元検視官が証言「異臭がする」「連絡が取れない」から始まる"検視"という仕事のリアル

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ほかに認知の端緒として多いのが、「最近連絡が取れない」「部屋から異臭がする」などの理由で、死者の親族や友人、近隣住民などから警察や消防に安否確認の通報があり、警察や消防が遺体を発見する場合です。

検視官に進む人たち

警察官のなかで検視官の道に進むのはどんな人たちでしょうか。

検視官になるための条件は概ねどこの都道府県でも同じで、刑事としての実務経験が10年以上あり、警察大学校(法医専科)で法医学を修め、警部以上の階級にあることが必要です。

そのような検視官であった私はさぞかし優秀な刑事であっただろうと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。検視どころか、刑事経験もなく検視官になった変わり種です。

私は長らく生活安全部で勤務していました。生活安全部とは、市民の安全で平穏な暮らしを守る、警察のなかでも生活に密着した部門です。

少年非行や風俗事犯、生活経済事犯やサイバー犯罪、人身安全関連事案などへの捜査や対策のほか、防犯のまちづくり、許認可行政、警察安全相談など、日常に関わる幅広い業務を担い、事件を「追う」だけでなく「未然に防ぐ」ことにも力を入れる、地域社会に根ざした活動をしています。

その後、総・警務部という企業でいう管理部門のような部署にしばらく在籍していましたが、正直なところ、そろそろ警察官としての業務に戻りたいと感じていました。

そこで、当時勤務していた警察署(以下、署)の上司(署長)に捜査部門を希望している旨を伝えたところ、まさかの刑事部捜査第一課に異動となり、検視調査室という検視の専門部署に配属されたのです。

当時の私の階級(警部)では、いきなり検視官となります。人の死に関する業務であり、事件ともなれば凶悪事件、その判断ともなれば相当な重圧を伴う大変な仕事です。

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