青春はなぜ「青」なのか?知れば知るほど奥深い漢字の世界を名門校教師が解説

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冒頭の“「青春」はなぜ「青」なのか”という問いに戻ると、「青春」の「青」は、この音符のイメージとも結びついているのではないかと考えられます。

「青」は“澄んだ状態”を象徴する言葉

「青」は単なる色ではなく、“澄んだ状態・純化された心・誠実さ”を象徴する言葉であるからこそ、世間のことをまだよく知らぬが故に純粋で、果てしなく澄んだ未来を思い浮かべることができる若い時期を示す言葉の一部として私たちの感覚とマッチし、だからこそ、中国に限らず日本においてもここまで広く長く使われているのではないか、と考えることができるのです。

このように、漢字というのは、ただ機械的に「形」や「読み方」を覚えるだけのものではありません。それではもったいないこと極まりないのです。ルーツをたどり、その成り立ちや構造を知ることで、漢字や熟語をもとにして普段何気なく使っている言葉の意味が一気に立体的に、そして意義深く見えてきます。

今回取り上げた「青」は、その象徴のような存在です。一見、ただの“色”を表すだけに見える漢字が、実は音を担う「音符」として機能し、「清・晴・精・請」などの漢字に「セイ」という読みと“澄みきった状態”という「意味」を与えている。

さらに「青春」という熟語では、「若さ」「純粋さ」「曇りのない未来」といったイメージを付与し、私たちの生活の中にしっかりと根付いている。

こうした背景を知ると、「青春」の“青”が、単に五行思想によって割り当てられた色に由来するだけではなく、その成り立ちに基づく奥深い意味を持つことがわかり、「青春」という何気ない言葉の奥行きがぐっと増していきます。

漢字の勉強とは本来、単なる暗記では味わえない“発見の面白さ”があります。語源や成り立ちを知れば知るほど、漢字を用いた言葉の景色が変わり、日本語の世界がより豊かに開けていく。そんな体験を、ぜひこれからも楽しんでみてください。

小原 広行 駒場東邦中学校・高等学校教諭

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おはら ひろゆき / Hiroyuki Ohara

1967年生まれ。千葉県出身。千葉大学で恩師と出会い、漢文の道に進むことを決意。千葉大学と早稲田大学の大学院を修了し、教育学と文学の2つの修士号を持つ。

授業を受け持った駒場東邦の生徒たちからは、そのわかりやすさから「漢文ネイティブ」の異名を授けられる。2009年よりNHKラジオ「高校講座古典」の漢文を担当(現在は「古典探究」ラジオ第2・Eテレ)。2010年より東京書籍の国語教科書の編集委員。

また、信州大学で年に2回、ゲストティーチャーとして「漢文学基礎」の特別授業を担当。

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