老後の蓄えを狙う「オレオレ詐欺」45歳首謀者がタワマンの隠れ家で"何者か"に襲われ卒倒、逮捕 『子供部屋同盟』2章①

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芥川賞作家✕東洋経済オンラインの「異色コラボ」連載小説!
「子供部屋おじさん」が、あなたの復讐、請け負います。
パワハラ、詐欺、痴漢冤罪(えんざい)、書店万引き――。裁かれぬ現代社会の悪を、人知れず断罪する者たちがいた。ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。
社会から疎外された「子供部屋おじさん」たちが、その特異なスキルを武器に、歪んだ正義を執行する。
芥川賞作家・高橋弘希が放つ痛快無比の世直しエンタメ『子供部屋同盟』より、第2章を4日に分けて毎日お届けします(今回は1日目)。

祖母の特殊詐欺被害

田辺健人(けんと)の祖母が特殊詐欺被害に遭ったのは、半年前のことだった。

子供部屋同盟
『子供部屋同盟』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

五月のある昼下がり、一人暮らしの祖母のもとに、一本の電話がかかってきた。

──私はお孫さんの会社の同僚です。お孫さんが、交通事故に遭いまして重傷です。治療にさいして、至急まとまったお金が必要です。お孫さんが、頼れるのはお婆ちゃんだけだと訴えているのです。

祖母の口座には、二百万の預貯金があった。年金をこつこつと貯めた二百万だ。祖母は、健人が事故で重傷だと聞いて気が動転し、自宅を訪問した同僚を名乗る男に言われるがままに銀行カードを渡した。

このとき健人は、近所のパチンコ屋でスロットを回していた。

そもそも無職の健人に、会社の同僚などいないのだ。

この一件で、祖母は警察への相談を渋った。おそらくは世間体を気にしていた。父母は、被害届を出せば二百万を取り戻せるかもしれないじゃないか──、そう説得を試みた。祖母は頑なに押し黙って、首を振るばかりだったという。

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