老後の蓄えを狙う「オレオレ詐欺」45歳首謀者がタワマンの隠れ家で"何者か"に襲われ卒倒、逮捕 『子供部屋同盟』2章②

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芥川賞作家✕東洋経済オンラインの「異色コラボ」連載小説!
「子供部屋おじさん」が、あなたの復讐、請け負います。
パワハラ、詐欺、痴漢冤罪(えんざい)、書店万引き――。裁かれぬ現代社会の悪を、人知れず断罪する者たちがいた。ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。
社会から疎外された「子供部屋おじさん」たちが、その特異なスキルを武器に、歪んだ正義を執行する。
芥川賞作家・高橋弘希が放つ痛快無比の世直しエンタメ『子供部屋同盟』より、第2章を4日に分けて毎日お届けします(今回は2日目)。

喉を締めて電話をかける

健人はノートパソコンに向かい、いくつかの下準備をした。その後に部屋の中央に立って、何度も発声練習をする。発声をよくする練習ではない。発声を悪くする練習だ。意図的に喉を締めて、しわがれた声を出す。

子供部屋同盟
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その声をスマホで録音して再生してみる。スピーカーからは、普段の自分の声とは似ても似つかない老人の声が聞こえてくる。たぶんいけるはずだ。

意を決して、あの番号に電話をかける。三度コール音が響いたのちに、スマホの向こう側で相手が応答した。

「はい、どちらさまでしょうか?」

やはり電話番号は生きている。健人の胸は一気に高鳴ったが、平静を装って、練習と同じ加減で喉を締める。

「あのぅ……、以前にそちらから、預貯金を保護する手続きが必要との電話があったんですが、その後どうなったのでしょうか……?」

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