老後の蓄えを狙う「オレオレ詐欺」45歳首謀者がタワマンの隠れ家で"何者か"に襲われ卒倒、逮捕 『子供部屋同盟』2章②

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「えーと、預貯金……、預貯金ですか? 少々お待ちください」

思った通りだ。詐欺集団は、オレオレ詐欺だけではなく、預貯金詐欺や架空料金請求や還付金詐欺、あらゆる手段で詐欺を試みると聞いた。この詐欺集団は、預貯金詐欺、つまりはキャッシュカードの詐欺盗(さぎとう)もやっていたのだ。

「失礼ですが、お名前とご住所を教えていただけますか?」

「中嶋重治です、住所は埼玉県川口市××町二の十二の三です」

「今はスマホからかけられていますか?」

「はい、どうも固定電話の調子が悪いようでして。なにぶん年なもんですから、設定の仕方がよう分からんのです」

「そうでしたか、少々お待ちください」

耳元に保留音が流れる。と、今度は違う男が電話に出た。

「失礼しました、担当の向井といいます。中嶋さん、折り返しのお電話ありがとうございます。確かに中嶋さんの口座は、早急に預金を保護する手続きが必要です。すぐに係の者をうかがわせますが、今日はご在宅でしょうか?」

「はい、一人で家におります。こつこつ貯めた年金なんで、とても心配です……」

「お気持ちお察しします。迅速に対応いたします。今からだと午後二時くらいにはご自宅へうかがえますが、いかがでしょうか?」

中嶋宅の近くで張り込み、芋づる式に全員を捕まえる

中嶋重治という人物は、実際に市内の住宅に居住している。住所も正確なもので、顔写真もフェイスブックで確認した。年齢は七十代で、一人暮らしをしている盆栽が趣味の爺さんだ。

中嶋宅の近くで張り込みをして、受け子が訪れたらなんらかの証拠をつかみ、警察に通報する。受け子の一人を逮捕すれば、そこから芋づる式に全員を捕まえられるはずだ。

健人はダウンジャケットを着て家を飛び出し、自転車で中嶋家へ向かった。

中嶋家の垣根の陰に身を隠し、探偵よろしく張り込みを始める。木枯らしが、アスファルトの落葉をからからと転がしていく。健人はカイロを買ってこなかったことを、今さらながらに後悔した。

待てども待てども、受け子は現れない。スマホを見ると、もう二時を過ぎている。やはりさっきの電話を不審に思い、受け子は訪問を中止したのだろうか──。

と、二時半が過ぎたころ、二人の男が中嶋家の玄関へ歩いていった。新卒風のスーツ姿の若者で、どう見ても半グレではない。外回りの営業でもやらされているんだろうか。

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