それでも健人は思わず拳を掲げた。
サンライズタワーのどこかの部屋が、奴らのアジトだ! 警察ですら手を焼いているのに、無職の俺が突き止めたんだ!
と、背後から肩を叩かれ振り返ると、喫茶店の親父が立っていた。
「お客さん、コーヒー代、払ってもらわないと困りますよ」
この後に健人が頼れるのは、結局は警察だった。サンライズタワーから最も近くにある王子警察署へ赴き、警察職員にいきさつを話す。
探偵ごっこみたいなのにはつきあってられないよ
宇田という小太りの中年警察職員は、いつかの若い警察官と同じように怪訝な顔をした。
「えーと、詐欺被害に遭ったときに、被害届は出してないの?」
「いろいろ事情があって被害届は出してないです! そんなことより詐欺集団のアジトが分かってるんです! すぐに乗り込んで逮捕してください! サンライズタワーのどこかの部屋なんです!」
「いやいや、証拠がないと動けないよ」
「詐欺集団の首謀者の男が、サンライズタワーに入っていくのを見たんです!」
「えーと、その男が首謀者っていう証拠は?」
「受け子らしき人物と接触していたし、人相も悪い男だったし、詐欺の首謀者に違いないんですよ!」
宇田は眉根を寄せる。
「君の話が嘘だとは言わないけど、詐欺に遭ったのに被害届は出してない。人相の悪い男がサンライズタワーに入っていったから、アジトに違いない。でも証拠はないって、こっちも暇じゃないんだからさ。さすがに探偵ごっこみたいなのにはつきあってられないよ」
──探偵ごっこ? 婆ちゃんが殺されているのに、探偵ごっこだと?
「ふざけたことをぬかすな! それでも警察官か! 分かった、じゃあ決定的な証拠を見つけてきてやる!」
宇田を怒鳴りつけて、警察署から飛び出していく。
──ちくしょう、サンライズタワーがアジトだってことは分かってるんだ! あのマンションのどこかの部屋で、今も特殊詐欺が行なわれているに違いないんだ!
自宅へ戻り、二階の自室へ駆けあがり、ノートパソコンを立ち上げて再びダークウェブへ潜る。オートロックのエントランスを突破する方法を探す。しかし目ぼしい情報は見つからない。と、ふいに子供部屋同盟のことを思い出す。



















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