あのサイトに抜かれた個人情報を悪用されてやしないだろうか──。子供部屋同盟へログインしてみると、万次郎からDMが届いていた。
──ハロー、ハウロウ、こちら通信部のジョン・万次郎です。ところでこの名乗り口上どうですかね? 好評なら採用しようと思うんですが、どうも皆さんの反応がいまいちなんですよね。一応説明しておくと、ハローは“こんにちは”で、ハウロウは“How Low?”と掛けられているんですよね。どうですかね? ぜひともご意見お聞かせください。
──で、くだんの件ですが、あなたのレポートは“もう少し頑張りましょう”と評価されました。というのも高齢者が詐欺被害に遭うってのはよくある話なんで、もうちょっとなんかないですかね? 加筆修正のうえ、再度レポートを送ってもらえますか?
そのDMを無視して、すぐにブラウザを閉じた。もうこんな意味不明な奴に関わっている暇はない。なにがジョン・万次郎だ、ふざけやがって。なんとかしてオートロックを突破する方法を見つけなければならない。
思案しながら自身の金色の短髪を掻きむしる。そしてふいに、高二の夏休みを思い出す。あのときも俺は、金色の短髪だった。
金髪にした十七歳の夏
健人にも、十七歳の男子特有の“悪いこと”に憧れた時期があった。その夏は、髪を金色に染めて、地元の悪友たちと、万引きに煙草に飲酒と、一通り悪いことをやった。それら悪行の中に、キセルがあった。無賃乗車だ。自動改札を出るさい、ぎりぎりまで前の客と距離を詰めて歩く。すると一人の客と認識して、自動改札のドアは閉まらない。金を払わずとも、改札を突破できる。
同じことを、サンライズタワーでやるのだ。
サンライズタワー付近で張り込みをして、あの坊主の男が帰宅したさい、居住者の振りをして一緒にオートロックのエントランスを突破する。そのまま奴がどの部屋へ帰宅するかを見届け、部屋番号を割り出す。
ここまできたら絶対に詐欺集団のアジトを突き止めて、奴らを刑務所へぶち込んでやる。
健人はダウンジャケットを羽織ると、再び家から飛び出していった。
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