「家族でさえも、目が合うことが怖くて…」Netflix『匿名の恋人たち』で話題の「視線恐怖症」、3年間引きこもったボクサーが明かす"絶望と希望"
茫然自失で「なんとか息をしているような生活」が続いていたが、ある日、一筋の光が差した。部屋の天井から吊るされたサンドバッグが目に入ったのだ。これは、まだ元気だった頃に買っておいたもの。
「実は僕、子どもの頃からボクサーに憧れていたんです。“強い男って格好いい”──その象徴がボクサーだったから。単純な理由ですが、そんな男になりたくて、『まずは形から』とサンドバッグを入手したんですよね。
どん底期には目に入らなくなっていましたが、自室で人目につかない生活を送るうち、少しだけ心が安定してきていたのかな。『変わらなきゃ』『やっぱり、僕はボクシングがやりたい』と、胸をくすぶっていた思いが強くなり、少しずつ活動を始めたんです」
20キロ減に成功! 次の段階に進もうとするも…
あがきながら、もがきながら。だがそこから、彼の静かな反撃が始まっていった。サンドバッグを叩くのはもちろん、筋トレも行った。さらには、人目につかない深夜の河原でのランニングも(外出時にはサングラスを装着)。地元のフィットネス系のセルフジムへは、人がまばらな昼帯だけ通うなどの工夫を行った。
これは功を奏した。身体は少しずつ軽くなっていき、最終的にはなんと20キロの減量に成功。人が少ない時間帯を選び、週2回のマンション清掃のバイトもこなせるようになり、そこから胸の奥で、子どもの頃からの夢が2度目の産声を上げ始める。「これなら、ボクシングを本格的に始められるかも!」。
だが運命は意地悪だ。次の段差が思いの外、高かった。いや、高すぎた。ボクシングを習うための最初の一歩──ボクシングジムの見学・体験に、どうしても行けないという日々が続いたのだ。ジムを訪れれば必ず、トレーナーや事務員とのやりとりが生じる。行くと決めるだけで、いや、行こうと思うだけでも、1週間、2週間、3週間と時間が溶けてしまったという。



















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