膨張と縮小を繰り返し、やがて【宇宙の闇】に消えていく…「太陽」の50億余年にわたる"紆余曲折"

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

太陽が赤色巨星になる時期の予想は、50億年後や63億年後など、計算方法によってさまざまです。本稿ではとりあえず「50億年後」として、話を進めましょう。

また、どの程度の大きさにまで膨らむかも、さまざまな値が出ていますが、10億年ほどかけて(つまり60億年後には)現在の150倍くらいの大きさになるとしましょう。

これは、太陽の大きさが現在の金星の軌道くらいまで広がるということです。したがって、太陽に近い軌道を回っている水星や金星は、赤く膨れ上がった太陽に飲み込まれて蒸発してしまうでしょう。

地球は、すでに光度を増した太陽にあぶられて灼熱の惑星になっていますが、赤色巨星となった太陽の表面がすぐ近くまで迫り、猛烈なガスが噴き出してくるために、まさに火炎地獄のような世界になるでしょう。

一方、地球の外側の軌道を回る火星が、現在の地球と似たような気候になるかもしれません。地球の生命は、地球が誕生してから10億年以内に発生していたと考えられています。ですから温暖な気候になった火星でも(未来の人類などが入植していなくても)、独自の火星生命が誕生する可能性はあるかもしれません。

赤色巨星となった太陽はいったん縮み、再度巨大化する

さて、赤色巨星となった太陽の中心部では、収縮がさらに進んで温度が上がり、今から60億年後に約3億度に達します(現在の太陽の中心部の温度は約1500万度)。すると、赤色巨星は新たな段階に入ります。

燃えかすだったはずのヘリウムが核融合反応を起こし、炭素や酸素に変わりながらエネルギーを生み出すのです。その結果、中心部分の収縮がいったん止まり、逆に膨れ上がっていた太陽の表面は縮んで現在の大きさの10倍程度になります。

ヘリウムの燃焼は急速に進み、1億年程度で(今から61億年後に)中心部分のヘリウムは使い果たされ、燃えかすの炭素や酸素がたまります。すると中心部分は再び収縮を始めて温度が上がり、周辺部に残ったヘリウムや水素が激しく燃えてエネルギーを放出します。

このため、縮んでいた太陽は再び膨張を始めて、今度は現在の200倍から300倍くらいの大きさにまで膨れ上がります。この段階を「漸近巨星分枝(漸近赤色巨星、AGB星)」といいます。これは太陽サイズの恒星の、最晩年の姿です。

次ページ地球の公転軌道に接近
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事