「お金がかかる」「家族の負担が大きい」は誤解!"在宅医療は無理"という人に専門医が伝えたいこと。制度を使えば"幸せな看取り"が可能な理由

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一方で、がん末期や慢性的な重度難病の終末期、脳梗塞後の安定期、老衰状態などではさまざまな変化が起こりますが、その変化に対して病院だからといって「万全」の治療やサポートができるわけではありません。

病院では、医師をはじめとする医療・介護の体制は、基本的に「治すこと」に特化した組織になっています。そのため、変化に対して「治すこと」を前提とした標準医療を行います。

その人らしく過ごせるために

「治すこと」が悪いわけではありません。ただ、「治らない」状態なのに「治そう」とすることで、苦痛を生んだり、いのちを縮めたりすることが少なくないのです。

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終末期の患者さんには、日常において医療的なケアと介護的なサポートを続けていれば、「急性期の変化」はほとんど起こりません。

患者さんやご家族に起こりうる変化についての説明がていねいになされていれば、それはすべて想定内の変化。

看取りが近い状態で大切なのは、変化が起こったときに「標準治療」をすることではなく、その患者さんの苦しさや痛みを取りながら、穏やかにその人らしく過ごせるためにどのような薬を出して、どのような介護体制を行うかなのです。

それは「治すための標準治療」の枠に収まるものではありません。

自宅では本人やご家族と人間的なコミュニケーションをとり、何でも言いやすい環境で薬をこまめに調整したり、介護的な環境を細かく調整するなど、「個人に応じたカスタマイズ医療」ができるのです。

山中 光茂 しろひげ在宅診療所院長

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やまなか みつしげ / Mitsushige Yamanaka

1976年三重県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。外務一種公務員試験に合格するも外務省に入らず、途上国医療に関わりたいという思いから群馬大学医学部に入学。学生時代、学費を稼ぐために新宿・歌舞伎町で名物スカウトとして活躍。医学部卒業後、ケニアの離島で医師としてエイズ対策プロジェクトの立ち上げに携わる。「NPO法人少年ケニアの友」の医療担当専門員。三重県松阪市長を2期務め、現在は東京江戸川区のしろひげ在宅診療所において、院長として「在宅医療」の普及に尽力。著書に『しろひげ在宅診療所』(角川春樹事務所)、『余命わずかの幸せ』(青灯社)などがある。

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