「お金がかかる」「家族の負担が大きい」は誤解!"在宅医療は無理"という人に専門医が伝えたいこと。制度を使えば"幸せな看取り"が可能な理由

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後期高齢者の1割負担、2割負担の患者さんの上限は1万8000円なので、どれだけ医療費がかかろうとも、その負担額を超えることはありません。がん末期や難病の方、緊急性が高い訪問看護の介入が必要な方の訪問看護も医療保険に含まれるため、その支出は1万8000円の枠で収まります。

ちなみに、緊急の往診や特別な注射などがない患者さんへの月2回の診察と24時間の管理料は、医療費1割負担の患者さんで約7000円です。診察での交通費や診療で使う物品の材料費などはかからないため、通院の交通費や検査費用などを考えると、在宅診療は特別高額な医療というわけではありません。

言うまでもありませんが、「お金」はあの世には持っていけません。

適切なタイミングで自宅での医療や訪問看護を入れることは「延命」だけではなく、限られた人生において毎日の苦痛を緩和することで、生きる幸せを感じることにつながります。

また、生活のサポートや身体補助のためにヘルパーを入れることで、当たり前の生活が送れるようになります。そのために、日本ではみんなで支えあう介護保険の制度も充実しているのです。

病気の重さや介護の必要性に応じた医療や介護にかかる費用は、その方の収入に応じた負担感になっています。

私たちもこれまで数万人の患者さんをみてきましたが、診察や介護的なサポートにかかる費用が、その人の生活や人生を圧迫する事例にはほとんど出合ったことがありません。

繰り返しになりますが、あの世にお金は持っていけません。誰もがそれをわかりながら、「今」を幸せに生きるために精一杯医療や介護、福祉制度を使わないことは、「いのちの無駄遣い」になるのではないでしょうか。

病状が急変したときは?

「在宅診療や訪問看護がしっかりと関わるとしても、夜間とかに急な変化があったらどうするんですか?」

こんな質問をよく受けます。

では、逆に病院だとどうなのでしょう? 病院や施設でも、看護師やヘルパーがいつも患者さんと添い寝をしてくれるわけではありません。夜間に急変があったときに医師や看護師が患者さんに関わるスピードは、在宅診療よりも病院のほうが確かに早いでしょう。

それでも私たちは言い切ることができます。「自宅でも病院と同じか、それ以上の医療はできます」と。

急性期脳梗塞や重度感染症などの突発的な病気への対応や、交通事故などでいのちに関わるケガをした場合の緊急対応などでは、病院だからできる治療は少なくありません。また、病院には24時間体制で状態管理が行えるメリットがあります。

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