「お金がかかる」「家族の負担が大きい」は誤解!"在宅医療は無理"という人に専門医が伝えたいこと。制度を使えば"幸せな看取り"が可能な理由

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実際に在宅診療を希望されたがん終末期の患者さんやそのご家族ですら、「自宅ではない最期」を望まれることは少なくありません。そこでいつも私がいうのが、「絶対にご家族に負担をかけることはありません」という言葉です。

もちろん、医療の世界だけでなく、この世界に「絶対」はないのかもしれません。それでも、私たちは「絶対にご家族に介護負担をかけない」という「覚悟」で在宅診療に臨んでいます。

患者さんのご家族が「負担」に感じるのは、「介護そのもの」だけではありません。

「苦しい」「痛い」など、患者さんが発する言葉で、本当に自宅でみていていいのだろうかという不安感が出てきます。昼は自宅で穏やかに過ごしてもらい、夜は苦しまずにしっかりと寝てもらう。そのような環境が保てるような医療技術の提供こそが、在宅診療医としての絶対的な仕事です。

私たちは、多くのがん末期の方々や難病の進行期の方々とのご縁をいただいていますが、持続的な苦痛や痛みを患者さんやそのご家族に負わせ続けたことはないと断言できます。

もちろん、病状や加齢に伴う変化により、ご家族にとっても「以前とは違う」という寂しさ、精神的な不安感が拭えないことは必ず生じます。そのようなときは医師だけでなく、訪問看護やヘルパーなど、毎日の生活にいつも寄り添う職種の役割が大切なのだと思います。

家での介護の負担をご家族が背負う必要はありません。

環境を整えることで、自宅だからこそ患者さん本人が最期まで穏やかな病状を保ち、ご家族はしっかりと愛情だけを注げる素敵な時間を持てた――。そのように思ってもらえると確信しています。

あの世にお金は持っていけない

がん末期の患者さんやそのご家族から、「医療や介護にお金を使うのはもったいない」「まだ自分たちで頑張れるから」という言葉を耳にすることがあります。長年、節約を重ね、ご家族のために蓄えてきた方ほど、その思いは強いのかもしれません。

しかし、医療も介護も、実際には多くが保険の枠組みでサービスは提供されており、自己負担額には収入に応じた上限が設けられています。高額療養費制度や介護保険の活用により、必要なサービスを受けながらも、経済的な負担は想像よりも軽くすむ場合が多いのです。

在宅医療も同様で、在宅診療、訪問看護、訪問リハビリ、そして必要な医療機器や処方薬まで、すべてが保険診療のなかで行われます。

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