翻弄される南相馬市小高区の住民 除染後回しで警戒区域を解除
原発事故や津波被害で現在も4万人近い住民が避難生活を強いられている福島県南相馬市--。立ち入りを厳しく制限する警戒区域や計画的避難区域の指定を政府が解除したことにより、市内小高区など福島第一原発から20キロメートル圏内の地域でも、住民の自宅立ち入りが自由にできるようになった(宿泊は禁止)。
ただ、上下水道などインフラの復旧どころか、放射性物質の除染やがれきの撤去も未着手のままでの立ち入り禁止解除については、多くの住民が複雑な感情を抱いている。
「警戒区域が解除されても何もいいことはない。除染もやってもらえないまま、自由に出入りしてくださいと言われても何もすることがない」。小高区神山に自宅を持つ松倉憲三さん(63)は憤懣やるかたない。
現在、市内鹿島区の仮設住宅で暮らす松倉さんは警戒区域が解除された4月16日以降、原発から12キロメートルにある自宅に7度にわたって立ち入った。だが、「家の中は足の踏み場もないほどめちゃくちゃ。湿気もひどく、とても住める状態ではない」(松倉さん)。
政府は4月以降、航空機モニタリングによる年間積算放射線量の想定レベルに応じて、警戒区域や計画的避難区域の一部を「避難指示解除準備区域」(年間積算線量20ミリシーベルト以下となることが確実であることが確認された地域)、「居住制限区域」(年間積算線量が20ミリシーベルトを超える恐れがある地域)、「帰還困難区域」(現時点で年間積算線量が50ミリシーベルトを超す地域)の3区分に再編。4月1日の川内村や田村市に続き、同16日付けで人口1万3000人強の南相馬市小高区や原町区、鹿島区の一部も再編の対象となった。
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