俳優・山本學が感じた【認知症で衰えるのは「知の働き」だけではない】という"当たり前の現実"

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山本 ホモ・サピエンスは個人の欲を抑え、個を超えて協力することを悟った種族です。でも、現代人は動物的な意思や感情を奪われて、すべてが「言葉」の奴隷になってしまっているイメージがあります。

「論破」なんかは、その典型に思えますね。そこで知を語るのは、ちょっと違うんじゃないかという違和感が拭えないんです。

「老いてなお盛ん」になるための姿勢

朝田 そうやって、クラスターの中で裸の王様になって満足するような傾向が、老若男女問わず、最近は強くなってきている印象ですね。

『老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること』(アスコム)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

山本 僕は自分に自信がないので、自分を過剰に飾って見せたいと思ったことがなくて、いつも「学ばなきゃ」というコンプレックスにとらわれて生きています。

だから、自分の「知」だけで我を押し通そうとしている人を見ると、「世の中を知らんのだな」「世界っていうのは、あなたが思っているよりはるかに広いんですよ」と、ちょっと憐れむような気持ちになります。

愚者の自己防衛ですね(笑)。芝居の世界に入って協力の大切さを悟ったので、前頭葉が少し大きくなったんですかね。

朝田 ややもすると知ばかりが偏重される昨今ですが、そこに注目が集まれば集まるほど、「情」や「意」の価値が新たに出てくる。

そこに気づいて、これまでの経験と反省をもとに、周囲や社会とうまく調和して、情と意を活かして生き抜いていく。

「老いてなお盛ん」になるためには、こうあるべきなのかもしれませんね。

山本 學 俳優

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やまもと がく / Gaku Yamamoto

1937年大阪府生まれ、東京育ち。俳優座養成所を経て、1957年に「裸の町」で映画デビュー。その後、『愛と死を見つめて』(TBS)、『天と地と』『八代将軍吉宗』(NHK)などのテレビドラマや映画、舞台で幅広く活躍。1978年の『白い巨塔』(フジテレビ)で演じた内科医・里見脩二役は代表作のひとつ。1993年には、第18回菊田一夫演劇賞を受賞。

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朝田 隆 メモリークリニックお茶の水理事長・院長

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あさだ たかし / Takashi Asada

認知症の早期発見・早期治療に特化した「メモリークリニックお茶の水」理事長・院長。東京医科歯科大学特任教授。筑波大学名誉教授。医学博士。1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。40年以上にわたり、2万人を超える認知症、および、その予備群である軽度認知障害(MCI=グレーゾーン)の治療に従事。認知症予防&治療の第一人者として診察にあたる傍ら、テレビや新聞、雑誌などで認知症の理解や予防への啓発活動を続けている。

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