しかし、経営する中、当時代表だった大門真悟さん(現会長)が「おもてなし」には限界があると感じたというのだ。
「やっぱり“おもてなし”には、お客様のニーズを聞いて、それに応えることが必要で、一定の技術がいるなと。また、お客様と会話するタイミングがあるかどうかにも左右されます。
外出されているお客様がいらっしゃれば、会話する時間がないですし、すべてのお客様のニーズを引き出していくのは非常に難しいんじゃないかという話があったんです」(現代表の渡邊さん)
そこで出たのが「おせっかい」というワードだった。
「お客様の滞在時間とか、お客様との会話の量とかは関係なく、従業員1人ひとりがお客様にやってあげたいことをやろうと。それであれば、いろいろなお客様にサービスを提供できるんじゃないかという話になり、“おせっかい”を始めました」(渡邊さん)

「おせっかい」は人をワクワクさせる
「おせっかい」は、宿側が勝手に「して差し上げたい!」と思ったことをするため、おもてなしとは違うというのだ。そしてこれが客にウケているという。お芋の季節には突然芋が振る舞われたりするというから、今日はどんな「おせっかい」が待っているのかと、客側も楽しみになるのだろう。
ほかにも、スタッフたちの「おせっかい」エピソードがあふれている。
ある日のこと、海外から旅行で訪れたカップルは何がきっかけなのかは分からないがフロントに到着するなり口げんかを始めた。
その様子を見ていたフロントスタッフはこの客のチェックイン後、スタッフミーティングの際に、このカップルを「仲直りさせたい」と提案。他のスタッフも、険悪な雰囲気の2人を見ていたため賛成し、食事の際にサプライズでミニブーケを用意することにした。
と、ここまでは他の宿でもあるかもしれないが、Nazunaの「おせっかい」はこれで終わらなかった。このミニブーケをスタッフから渡したのでは、ただのサービスになってしまう。
スタッフは夕食時間にそっとカップルの男性を手招き。「これ、私たちからのプレゼントです。これを彼女にあげて仲直りしてみて」とミニブーケを男性に手渡したのだ。
照れくさそうにする男性の背中をスタッフがそっと押すと、男性は彼女のもとへ。そして「さっきは言い過ぎた。旅を楽しもう」と言ってミニブーケを彼女に献げると、彼女は驚き、笑顔が戻った。
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