
たゆまぬ努力を続け、怪我や体調不良の日も練習を休むことはなかったが、結果につながらなかった。報われない日々のなか、「自分には価値がないんじゃないか」という不安に苛(さいな)まれた。
そんな時期、仕事に行こうと家のドアノブに手をかけるだけで吐き気がして、どうしても外に出られなくなることがあった。
「僕はなかなか頭をオフにできない性格で、仕事のプレッシャーがずっと残ってしまいがちです。現役時代は家にいる間に、外で戦う恐怖が膨らんで外に出られなくなってしまうことがありました。だから追い詰められそうなときは、逆に家に帰らずにグラウンドの近くの車の中で寝泊まりしていたこともあったくらいです」
安心できるはずの家をあえて遠ざけながら、それでも「とにかくもう一度グラウンドに立ちたい」という執念にも似た気持ちに、しがみついていた。
「24時間アスリート」、身体づくりをビジネスに
仕事が頭から離れない小泉さんにとって、家に帰ったとしても完全にオフになるわけではなかった。
「結局、家でも頭の中はずっとサッカーのことばかりで。身体づくりや食事管理……アスリートとして必要なことを、徹底してやっていました」
誰にも見られない地道な努力を続けた。コンディションづくりの一環で始めた自炊も、やがて自分なりに工夫し進化していった。
「自炊の様子をSNSで発信し始めたのは、モチベーション維持のため。ひとり暮らしで料理をするのは正直、虚しいし面倒くさい。でも“見る人の役に立てば”と思って明るく発信することで、自分自身を盛り上げていたんです」

そんな日々の積み重ねが、思いがけず「人の期待に応える自分」を見つけることにつながった。
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