「何で今日のお昼はパン1個なの?」 ベストセラー作家ブレイディみかこさん、貧乏だった高校時代の記憶 "泣きごと言えない"社会の背景にあるもの

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――確かに、「今から電話していい?」って確認を取ってから電話する人が多いとか。

そうそう。あと最近、私が特に気になっているのは、メールの最後に書いてある「お返事は不要です」っていう文言。相手に返事を書く時間を割かせたくないっていう思いやりからなんでしょうけれど、そういう文化、習慣はイギリスにはないので、最初に見たとき、これはどういう意味なんだろうと。もしかして私は嫌われているのかなって。だから「いやいや、書くなって言われると書きたくなるんです」って、あえて返事を書いたりしてね(笑)。

失敗するのが怖い

――まわりに気を遣いすぎるんでしょうね。

失敗するのが怖いのかな。スマホですべて調べてからことを起こせば、だいたい成功するから安心できるとか。でも、失敗しないとわからないことって、いっぱいあるじゃないですか。

昔はスマホなんてなかったから、飲食店だって「とりあえずまず入ってみようか」って言って入っちゃう。今考えるとギャンブルみたいな感じですが、料理がまずくても笑い話にしちゃうとか、そういう鷹揚とした感じ、大らかな感じがありましたよね。

『SISTER“FOOT”EMPATHY』(集英社) /コロナ禍以降の社会の動きを鋭く見つめ、これからの世界とわたしたちを考えるための、エンパワメント・エッセイ集
新刊『SISTER“FOOT”EMPATHY』(撮影:梅谷秀司)

――そうそう。今はそういう余裕みたいなのがないですね。

失敗したっていい。「はい、次いこ!」って軽快さが必要というか。

失敗するにしろしないにしろ、経験はしておいたほうがいいと思います。スマホで経験した気になっているんじゃなくてね。実際に自分でやってみたら全然違うから。

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