・2人のダイレクトチャットでは、アベさんがサトミさんに「もっと訪問先を増やせないのか」と問い、そのたびにサトミさんが謝罪をしているやり取りが、入社1カ月経過後から始まった。「言い訳をしないでほしい。あなただけが大変なわけではない」といったやり取りが週に1、2回程度発生している。また、他の社員に比べ、2人の直近1カ月間のメッセージの頻度・回数は5倍ほど多い
・入社からの期間が短いため、サトミさんの行動について、実際に人事評価に反映された実績はない
「パワハラとまでは言えない」
人事部は、確認できた事実に基づき、オープンチャットでのアベさんの言動は「パワハラとまでは言えない」と判断しました。よって、懲戒処分を科すことはしませんでしたが、「サトミさんへの揶揄と取れる発言を慎むこと」を誓約する文書の提出を、アベさんに求めました。
また、チームメンバー全員に対し品位ある言動をするよう注意しました。
一方で、サトミさんにもアベさんの指導方法を否定せず、謙虚に受け入れる姿勢を示すこと、また、育児介護休業法に定める「時間外労働の制限」を正式に申し出てもらうようにしました。
そして、1カ月について24時間、1年について150時間の範囲内での残業には協力するよう求めました。
<解説>
ユウヤさんは2カ月ほど前から通勤時の下痢症状に悩んでいましたが、通っていた消化器内科クリニックの主治医から「過敏性腸症候群」の診断書を受けたことを機に、会社に休職を申し出て、3カ月の休養を取ることになりました。
漏らしてしまうことへの恐怖で、通勤でバスに乗ることが困難になったことに加え、出社しても打ち合わせなどトイレのない状況に短時間でもおかれることに不安を感じ、業務にも支障が出始めたからです。
ユウヤさんの先輩であるハヤタさんは、明るくて頭の回転が速く、周囲も一目置くタイプです。きわどい発言をしても面白がられることが多く、仕事ぶりも的確で、上司や女性社員からの評判も悪くありません。
しかし、ユウヤさんはハヤタさんが自分を「ハム」と呼ぶたびに不快な思いをしていました。一度は「やめてほしい」と伝えましたが取り合ってもらえず、周囲がハヤタさんの発言に笑っているのを見ると反論する勇気が出ませんでした。
むしろ自分に問題があるのではないかと考えて、落ち込んでいました。
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