「無理しなくていいからね」上司の過度な気づかいが部下育成にマイナスでしかない理由

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先輩営業たちは困惑した。彼らから見れば、今の目標は決して無理なものではない。以前はもっと高い数字を求められていた。だから先輩たちが「そんなに大したことないよ」とフォローしようとするのだが、その都度、所長はそれを「プレッシャーになる」と考え、やんわりと制するのだった。

「そんなことを言ったら、若い子たちが辞めてしまう」
「もっと丁寧に接しないといけない」

結果として、所長の「大丈夫?」という言葉が日常的に飛び交うようになった。若手たちは「自分たちは信用されていない」「このままでは成長できない」と感じるようになり、ついに「もう限界です」と次々に退職していった。

新刊『わかりやすさよりも大切な話し方』にも書いた通り、「空気」が人の判断に強い影響を与える。最初は火がついていたのにもかかわらず、上司の過度な気遣いが、水を差すかっこうになったのだ。

リーダーの不安は部下に伝染する

この状況を理解するために、ひとつの例え話を考えてみよう。

目の前に、夜道があったとしよう。街灯はあるが、それなりに暗い。しかし、周りに危険なものは特になく、ルート通りに進めば目的地に着く道だ。初めて通る人にとって、多少の不安があるのは当然だろう。

このとき、指導する人はどう声をかけるべきか。正しいアプローチはこうだ。

「この地図通りに行けば迷うことはないから大丈夫。街灯もついているし、懐中電灯もあるから足元も見える。安心して行きなさい」

このように自信をもって言えばいい。いわゆる「太鼓判を押す」という姿勢が大事なのだ。もちろん、次のように付け加えておくことも大事だ。

「何かあれば連絡して。すぐ飛んでいくから」

ところが、過度に気遣う人はこう言ってしまう。

「目の前の道は暗いよね。大丈夫? 経験がないなら、怖いよね」
「本当に大丈夫? 迷うこともあるかもしれないよ」
「何か大変なことが起きるかもしれない」
「もし何かあったら、無理せず引き返してきてもいいからね」
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