腎臓は、体のよごれた水(血液)を捨てて、体にきれいな水(血液)を循環させるシステムを一手に引き受けています。わたしたちが日々を問題なく生きて活動していられるのは、この体内浄化システムが日夜休まずに機能しているおかげだと言っていいでしょう。
しかし、この体内浄化システムの働きは、年齢を重ねるとともに知らず知らずのうちに落ちてきてしまうのです。
腎臓には絶え間なく大量の血液が流れ込んでいるのですが、その血液の濾過を担当しているのがネフロンです。通常、人の腎臓には、ひとつで約100万個、ふたつで約200万個のネフロンが備えられています。
ところが、このネフロンは「消耗品」であり、年々使い続けるうちに数が減って、60代になると20代のときの約半分のネフロン数になってしまいます。つまり、こうしたネフロン数の減少とともに濾過能力が低下し、加齢とともに体内浄化システムの力が弱っていってしまうわけです。
腎臓が「沈黙の臓器」と呼ばれる理由
しかも、多くの人は、自分の「体内浄化システム」の力が弱っていることに気づきません。
腎臓は「沈黙の臓器」です。慢性腎臓病(CKD)の場合で言えば、初期段階では症状らしい症状はまったく見られません。中期の段階になっても現われる症状はせいぜいむくみやだるさ、疲労感、息切れ、夜間頻尿くらいのもの。これらの症状は、ある程度歳をとれば誰でも感じる不調であるため、腎機能の低下を疑うことなく病気を見過ごしてしまうことが多いのです。
そのため、「気がついたときには、すでに腎機能がかなり落ちてしまっていた」という事態に陥る人が後を絶ちません。なかには、「別の病気で受診したのに、医師から腎臓のほうがもっと悪くなっていると言われた」「久しぶりに健康診断を受けたら、医師からもういつ腎不全になってもおかしくない状態だと指摘された」といった患者さんもかなりの数いらっしゃいます。
日本における成人の慢性腎臓病患者は約2000万人。これは日本の成人の5人に1人が罹っていることを示す数字であり、日本人の「国民病」と言ってもいいでしょう。つまり、いまの日本では、非常に多くの人が気づかないうちに腎機能を低下させていて、「体のよごれた水を捨てて、きれいな水を循環させる浄化装置」をみすみす弱らせてしまっているわけです。



















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