服は大衆的なブランドで、価格は抑えつつも素材や機能性に優れたものを選ぶ。食事も気軽に楽しめるチェーン店やファミリーレストランを好み、流行りを追う華やかでおしゃれな消費には関心がなかった。
やよいは当初から2人のこの違いに気がついていたのだが、そこには目をつむっていた。ただしの堅実さをむしろ長所だと受け取り、「彼はお金がないわけではないのだから、私が流行りの店に連れていったり、服をコーディネイトしたりすればいい」と、考えていたのだ。
そこで、親しくなってきた4回目のデートで、「ただしさんは、背も高いし、服装を変えたらもっと素敵になると思う。私に服を選ばせて」と、行きつけのセレクトショップに連れていった。
そこで、「こんなの似合うんじゃない?」とシャツやズボンを選んで、ただしの体に当てた。しかし、彼は「そうかな」という気のない返事をして、どれも試着しようとはしなかった。
結局その日は何も買わず、お茶を飲みにいくことになった。その席で、やよいは、普段から思っていたことを率直に告げた。
「堅実な暮らしは素晴らしいと思うの。でも、そればかりだと生活が味気ないでしょ。私は、好きなものに囲まれて生活をしていたい。ファッションや食事に行くお店にお金を使うことは、単なる消費ではなくて、生活を豊かにする投資だと思うの」
だが、そのデートの翌日、ただしの相談室から交際終了の連絡が届いた。理由は、こうだった。
「お金を何に使うか、その金銭感覚が違う。彼女は僕と暮らしても楽しくないだろうし、ストレスが溜まると思う。結婚は難しいと感じました」
これは単に“浪費か倹約か”の問題ではなく、 “金銭感覚の相性”が違っていたのだろう。やよいにとっては“ライフスタイルを彩るための支出”は、必要不可欠。一方、ただしにとってそうした支出は“ムダ”に映り、 “堅実に生きるための支出”を大切だと考えていた。
結婚生活は長期的な“共同経営”だ。いくらお互いの収入が高くても、資金の配分や価値観が異なれば、摩擦が絶えない。今回のケースは「お金を持っているか」ではなく、「お金をどう使うか」の感覚の違いが、成婚へと進めるかどうかを決定づけた。
映画のあとにラーメン⁉︎
ひろみ(35歳、仮名)はメーカー勤務で、年収550万円。学生時代からSNSで情報収集しては、話題のレストランや流行のスイーツ店に友達と足を運ぶのを楽しみの1つにしていた。
一方、お見合から仮交際に入ったたかお(37歳、仮名)は、公務員。年収は650万円と安定しているが、食へのこだわりは薄く、普段の生活は堅実そのもの。外食はチェーン店やファミレスが中心で、流行に敏感なタイプではなかった。
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