《ミドルのための実践的戦略思考》クレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ-技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』で読み解く 法人向け英会話スクールの営業担当・安田の悩み

しかし、技術進歩のペースは、時として主流顧客が求める性能向上のペースを上回る。そうなった時、破壊的技術は主流市場で競争力を持つようになる。つまり、顧客は既存の持続的技術の過剰品質に気付き、全く異なる別の判断基準によって判断をするようになる。既存の「持続的技術」で成長を重ねてきた優良企業が、その破壊的技術に気付き、投資を始めるころにはすでに手遅れになっている。

出典:『イノベーションへの解 利益ある成長に向けて』(クレイトン・クリステンセン・著 翔泳社・刊
本文内容に即し、一部文言を変更

つまり、「失敗を引き起こすのは、誤った経営判断だけではない。企業が成功するために不可欠な行動--たとえば主要顧客のニーズを満たすこと、収益性から見て最も魅力的な分野に集中投資することもまた、失敗の原因となりうる」ということであり、これが「ジレンマ」とされるゆえんです。

では、このジレンマをどのように打破すればいいのでしょうか。クリステンセンは、そのソリューションを以下のように提案しています。

・破壊的技術は、既存の顧客のニーズの延長線上には見つからない。既存の顧客から離れること。そして過度に机上で考えすぎないこと。まずはスモールステップで、試行錯誤と学習を積み重ねていくことを心がけるべきである(いきなり壮大なプランをぶちあげないこと)

・破壊的技術を開発するプロジェクトを、主流組織から離れた独立した小さな組織で対応させること。そして、主流の組織における意思決定プロセスや、重要業績指標などは使わないこと(たとえば、主流の組織が、一社あたりの取引金額規模を重視していたとしても、それをそのまま使用するべきではない。たとえばコンタクト社数などに変更が必要になる)

・破壊的技術は、既存の顧客に売り込んではいけない。その破壊的技術を求める新しい顧客を自ら開拓し、その顧客のニーズに応えるようにすること

つまり、既存の持続的技術には、一度確立された勝ちパターンが、顧客との関係性や組織内部の仕組みまで浸透しているため、それを変えることはほとんど不可能に近い。したがって、それを変えようと無駄なあがきをするのではなく、ゼロベースで新しい組織、新しいやり方を模索すべきであるということです。

■解説:安田さんは何をすべきだったのか?

さて、このセオリーを踏まえて、安田さんは何をすべきだったのでしょうか。ミドルの立場で考えると、本書のソリューションの一つである「新しい小さな組織を作る」のは、あまり現実性のあることではないでしょう。では、ミドルは日々の現場で何に気をつけるべきなのでしょうか。

そこで、イノベーションのジレンマの続編である『イノベーションの解 利益ある成長に向けて』をひも解いてみましょう。この中でクリステンセンは、「顧客の過剰満足に注目せよ」と言っています。つまり、顧客に対して過剰な性能を提供してしまうことが、破壊的技術(破壊的イノベーション)を生み出す素地であり、したがって「過剰満足を早く見極めること」が何よりも重要ということです。

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