低価格路線のサイゼリヤは客数を増やしているが…外食を利用する消費者の財布が限界を超えつつある過酷な現実

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(撮影:尾形文繁)

8月末、外食最大手のゼンショーホールディングスが牛丼など一部商品を9月から値下げすると発表した。すると株式市場では「物価上昇のこの時代に利益を削る値下げか?」と懸念され、一時5%以上も株価が下落した。競合他社を巻き込んだ価格競争への懸念から、吉野家HD、松屋フーズなども株価が下落する影響が出た。

すき家は「多くのお客様により手頃な価格でお楽しみいただきたい」とコメントしたと報じられているが、この背景には3月に起こった異物混入問題の影響による客数減少がある。

問題以降、すき家の4月から直近8月まで来店客数が前年割れで推移したため、「値下げ」という形でお詫びを重ね、離反客の再来店を促す狙いであろう。各社の株価はその日のうちに平常に戻ったが、外食業界の事業環境悪化を懸念する市場の見方が表れたといえるだろう。

外食業界は悪くなっているように見えないが…

実際の数字を見ると、決して悪くなっているようには見えない。業界団体である日本フードサービス協会の売上動向(増減率 対前年同期比)は、今年に入って以降ずっと105~110%程度のプラスで推移している。各業態別に見てもほぼ前年比プラスを維持しており、好調に成長しているという見方になるだろう。

ただし、売上高を「客数×客単価」の形に分解すると様子が変わってくる。この順調な売り上げを作っているのは客単価の上昇によるところが大きく、客数に関しては横ばいかやや減少という構成になっている。お察しのとおり、外食においても原材料費、光熱費、人件費が高騰しているため価格転嫁せざるを得ず、値上げが常態化している。この売上増の主要因は値上げによるところが大きいようである。

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