学生に"義務教育レベル"を教える大学に存在意義はないのか? 大学全入時代に「Fラン大学」が果たす《大きな役割》

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講義風景
日本企業の雇用・人事体系の変化が進めば、「Fラン大学」をはじめとした定員割れの大学に“新たな役割”が期待される(写真:A_Team/PIXTA)
日本社会において「大卒」は大企業の幹部候補生になるためのパスポートだった。それを獲得するために、熾烈な受験競争が繰り広げられてきた。この競争は、定員割れの大学が増えても、変わりなく続く。しかし、企業の雇用・人事方式が現在の終身雇用・年功序列から変化すれば、事態は大きく変わるだろう――。野口悠紀雄氏による連載第155回。

日本社会における「大卒」の意味

大学の定員割れが増えている。日本私立学校振興・共済事業団がまとめたデータによると、2025年度に入学者が定員に満たないで定員割れとなった大学は、全国594の私立大学のうち53.2%に当たる316校に上った。半数以上の私立大学が定員割れとなるのは3年連続だ。

こうした事態に陥っている原因は、第1には18歳人口が減少していることであり、第2には大学数が増えていることだ。日本は今、大学が社会において果たすべき役割について、正面から考えなければならない段階に達している。

大学が果たすべき役割とは、言うまでもなく、人々に高度の知識と技能を教育することだ。しかし、これまでの日本社会における「大卒」の現実的な意義は、必ずしもそうしたことではなく、社会の中で一定以上の地位につくための“パスポート”としての役割であった。

具体的にいえば、「いい会社」に就職し、そこで一定以上の地位を得るための資格である。そして、さらに簡単に言えば、「いい会社」とは大企業のことであり、「一定以上の地位」とは管理職を指す。こうした地位につくことができる人の数は限られている。したがって、なんらかの基準を設けて選別する必要がある。その際の基準が「大卒」であったのだ。

ただし、こうした地位を得られる人々の総数は大学卒業者の総数よりも少ない。だから、すべての大学卒業者がこの資格を得られるわけではない。そこで、一定のところに線を引く必要がある。これが一般に「学歴フィルター」とか「学歴スクリーニング」と呼ばれているものだ。

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