定員割れになっている大学は、存在意義はないのだろうか――。確かに、そうだという考えも強い。
財務省は4月の財政制度等審議会の分科会において、定員割れに陥っている私大では、四則演算や方程式の取り扱い(数学)、現在形と過去形の違い(英語)など、義務教育で習得しているべき教育を行っているとした。そして、こうした大学に対する私学助成金は見直す必要があると論じた。
しかし、定員割れの大学であっても、入学者に対して教育を行うことによってその能力を高めることは可能である。だから、存在意義がないわけではない。
“定員割れ大学”が担う新たな役割
大学生の年齢になっても義務教育レベルの知識・理解力を持てなかった原因としては、人によってさまざまな理由があるだろう。しかし、そうした人たちが、定員割れに陥っている大学で教育を受け、義務教育レベルの能力をつけることができれば、それは、教育を受けた当人が挽回の手段を得るだけでなく、日本経済全体にとって歓迎すべきことだ。日本の生産性は、それだけ向上したことになるからだ。
日本は「学歴社会」と言われているが、日本より進学率が高い国は多い。だから、日本の大学進学率はまだ引き上げる余地がある。
このようにして大学進学率が高まれば、日本の人的資源の質は向上する。それによって、ビジネスの効率性が上昇するだろう。これは、日本経済の潜在成長率を引き上げるために多大の貢献をするに違いない。
それだけではない。日本社会ではこれまで、社内のOJT(実際の職務を通じて必要な知識やスキルを習得させる教育手法)で仕事のやり方を学ぶというのが主流の方法であった。こうした方法では、AI(人工知能)などの緊密な技術に対応していくことは極めて難しい。
今後、AIなどの新しい技術が発展していく中でリスキリング(学び直し)を行うには、「企業内での教育」から「大学での教育」に重点を移していくことが必要だ。すでに就職済みの人々が大学で新しい技術を学ぶ機会を得るために、定員割れの大学が一定の役割を果たすことが可能だろう。
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