「味は変わらず3割安い」卵を売る、田舎道にあるレトロ自販機→「スーパーに並ばない規格外品」を売り切れ必至の人気商品にした"親心"の物語

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鶏の卵は、エサの特徴がそのまま表れやすい特徴があり、オリジナル商品開発やブランド化がしやすいという。宮城社長は「全国的にもブランド卵が多くて、このような商品開発をやっているのはうちだけではないですが」と前置きするものの、精力的に自社ブランドの展開を推し進めている。

自社の卵を使ったドーナツの販売もしている(筆者撮影)

自販機導入のきっかけは、会社の移転だった。もともと沖縄県外では卵の自動販売機をよく見かけており、車が乗り入れて停車するのに便利なスペースを得たことで「良いかもしれないな」と思い立った。規格外品もしっかり売りたいと常々考えていたところだった。

そこからの行動は早かった。養鶏の業界雑誌にあった広告を目にした。「ページをぱらぱらぱらとめくってね。すぐ電話しました」

数ある自販機の中から、三友機器株式会社(福岡市)が製造販売する「たまご市場」を採用した。立体駐車場のように内部で商品が順繰りする「ロータリーストック方式」で、補充した分から先に販売されるため、長時間取り残される商品が発生せず、新鮮さを担保できる仕組みだ。

自販機内部の様子(筆者撮影)

宮城社長は「会社の知名度が上がりました。場所の説明をするときも『自販機があるところ』と言えばすぐわかってもらえます」と話す。生産者と購入者の直接の接点になっていることで、お互いのコミュニケーションも弾むという。

「選ぶ楽しさ」でついつい買っちゃう色んな卵

商品数を多く取りそろえることで、「卵を買う」という行為に選ぶ楽しみを創出した。スーパーマーケットで日々の買い物の一つとして卵を買うのとはちょっとだけ訳が違う。卵の自動販売機の前で「卵を買う」というピンポイントな買い物をすることとなる。

筆者も自販機で卵を買って帰ったが「とりあえず安いし、まずは『中身美人』を買うか」「『ふたご』を買って割ったら毎回楽しいだろうな」「今お腹空いているから、すぐ食べられるようにゆで卵も買っておこう」と、卵の自販機の前に立つだけで、卵の物欲が押し寄せてくるのだ。ついつい客単価を上げてしまっている自分に気づかされる。

ついついたくさん買ってしまった卵商品たち(筆者撮影)

沖縄県の鶏卵自給率は約7割で、これは全国の97%(2020年度、農林水産省)と比べると圧倒的に低いと言える。だからこそ、沖縄県産卵の魅力について「一番は新鮮さだと思います」と宮城社長。その言葉を象徴するように、見奈須フーズの自販機には「うみたてたまご」と大きな文字が躍っているのだ。生産者からどこよりも最短距離の卵を。「卵だけ買うためにスーパーに並ぶの、大変でしょう」。24時間、新鮮卵が待っている。

長濱 良起 フリーランス記者

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ながはま よしき / Yoshiki Nagahama

フリーランス記者。得意ジャンルは音楽・経済。沖縄県出身・在住。
元琉球新報記者。フリー転向後も新聞や雑誌、書籍、ウェブ媒体などでの記事執筆を続け、これまでの取材執筆本数は約2000本。海外メディアの日本国内取材コーディネーターとしても活動。旅と音楽が好きで、訪問国数40ヵ国超。1986年生まれ。

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