「コハウジング」を選択する人が増えている理由、コミュニティー意識が高まるものの共同生活ならではの難しさも
メア・アルス・ボーネンの創設メンバーで、マネジングディレクターを務めたこともあるホーファー氏は「10年前はそうではなかった」と振り返り、「孤独は現代社会が抱える大きな問題の一つであり、クラスターフラットが日々の暮らしを少し楽にしてくれる」と話す。

コハウジングに特に適しているとされるのが高齢者層だ。55歳を超えるチューリヒ住民を対象にした22年の調査では、80%が多世代世帯で暮らしたいと考えており、半数がコハウジングに関心を寄せていた。コハウジングは高齢者施設に入ることなく、仲間や支え合えるコミュニティーが得られる選択肢を提供する。
チューリヒの高齢者の住まい探しを支援する団体でプロジェクトを担当するニナ・シュナイダー氏は、「高齢者は広過ぎるアパートや、顔見知りのいない地域で一人暮らしをしている場合が多い」と説明。「共用エリアで他の人々と交流することは、特に貴重な経験だ」と語る。
チューリヒがこうした共有型モデルを積極的に採用できる背景には、協同組合、または市が住宅ストックの20%超を保有しているという事情がある。同市がコハウジング開発の資金繰りや規制の枠組みを設けており、協同組合や民間開発業者に土地を分譲する際には、詳細な建設提案の提出を求めるのが一般的だ。