新築マンションを買えない時代がやってきた いまベターな選択といえるのは注文住宅だ

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 人手不足や資材高騰の問題を先に触れたが、債務超過なり倒産や民事再生に陥る会社も増えている。建設会社はそのビジネスモデル上、建物を建て続けていかなければ資金が回収できず経営が成り立たない。しかし、人手不足が著しいため、人出を確保するために先に高い人件費がかさみ、売り上げがたっても十分な利益を得にくくなっている。

人材が足りない中で建設会社がマンションを建設しようとすると何が起きるか。十分な管理ができないため瑕疵が発生し、その修理のために費用がかさみ、工事が遅延するのだ。建設会社は10年間の瑕疵保証を義務付けられているため、修理をする義務がある。さらに工期が延びれば、依頼主に遅延損害金を支払わないといけない。そのリカバリーのために、赤字覚悟の低価格で他の案件の工事を引き受けているのが現状である。

購入するなら自己責任の意識を持つ

瑕疵の修理や遅延損害で利益が低下し、それをカバーするために安請負を行う。そしてまた品質が下がり、瑕疵が発生し、工事が遅延する。これがいわゆる建設界の負のスパイラルだ。行き着く先は債務超過。好調に業績を伸ばしてきた中小の建設会社の中には、拡大路線に舵を切ったとたんに倒産するところも少なくない。その多くは人材不足が主な原因である。

これから東京五輪や震災復興、増水整地などで公共工事はさらに増えていくだろう。そのあおりをうけて民間工事は後回しにされるが、ゼネコンは人数の限られた職人を高値で引き抜いてでも計画した物件の建設を進めざるをえない。そのため、実行予算が大幅に膨れ上がることとなるが、高値で販売できる大手ならともかく、建設コストを販売価格に反映させることができない中小の建設会社にとっては、極めてシビアな事態といえる。

このように、現状の新築マンションは無理に無理を重ねているため、品質に問題がある可能性が少なくない。もはや誰もコントロールできない領域にある。その意味では、戸建ての注文住宅の方が品質は確保されるのではないだろうか。個人の仕事である戸建ては、品質がコントロールしやすく、細かい調整も可能だ。コストがかさみそうなら、仕様を変更したり、サイズダウンするといった具合に、クオリティを担保するためのフレキシブルな判断ができるからだ。

ただし、戸建ては戸建てでも、建売住宅はマンションと同じ問題をはらんでいるといえよう。下手をすると品質はマンション以下になるケースも少なくない。マンションであればある一定レベルのグレードが備わっているが、建売にはそれがない。現在の状況下におけるベターな選択は第一に注文住宅。新築マンションや建売住宅は自己責任の上で購入するしかないと考えた方がよいだろう。

黒崎 敏 建築家

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くろさき さとし / Satoshi Kurosaki

1970年石川県金沢市生まれ。1994年明治大学理工学部建築学科卒業後、積水ハウス株式会社東京設計部で新商品企画開発に従事、FORME一級建築士事務所を経て2000年APOLLO設立。2008年株式会社APOLLOに改組。現在、代表取締役、一級建築士。「グッドデザイン賞」「東京建築賞」「International Space Design Award」グランプリなど国内外の受賞歴多数。都市住宅を中心に国内外で設計活動を行う。
 

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